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神の娘 ~外伝~  作者: 藍


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妖精の森(2)

四季神の屋敷を後にして『妖精の森』の自分の住みかへと帰って来たファイは、昔を思い出していた。


妖精は自然の気と生命力が集まって生まれる。


そして、妖精の命を宿した物は虹色の光を放つ。


石の妖精なら虹色に輝く石から、植物の妖精なら、虹色に輝く木や花、実から生まれてくる。


ファイは、石の妖精の中でも貴重な宝石から生また妖精だった。


宝石にから生まれた妖精は皆、宝石の様に美しい瞳を持ち、白色の大理石の様に白い肌、金に輝く美しい髪を持っ生まれてくる。


その容姿は神々から大変に愛され、妖精が宿った虹色の宝石自体が大変高価な値段で取引される。


だが不運にもファイの宿った宝石は、買われた神の不注意で傷が入いって欠けてしまった。


そして生まれたのが妖精ファイだった。


欠けた宝石の影響なのか、生まれた時から体の半分が赤い痣に覆われていた。


その姿を見たい神は言った。


「なんて醜い妖精だ…」と。


そうしてファイは買われた神の屋敷を追い出された。


その後も、使える神を探して色々な神の元を訪れたが、皆がファイを醜いと嘲笑い拒絶する。


「あの醜い痣が無ければ」


「宝石眼は美しいのに痣のせいで惜しいことだ」


そうしてファイは醜い姿を見せ無い為に白い布を、頭から被り、使える神を探したが見つからず、諦めて流れ着いたのが、この『妖精の森』だ。


『妖精の森』には、色々な妖精がいた。


皆、何かの事情があり森に住むが、誰もがその事情に触れないし、必要以上に干渉してこない。


静かに時間だけが過ぎていくファイには居心地が良かった。


そんな時に、森でシノエ達と出会った。


「こんにちは。貴方、見掛けない妖精だけど最近ここに来たの?」


「あ、ああ。俺の名はファイ。石の妖精だ。よろしく頼む」


「私は、シノエ。植物の妖精よ。この森には結構前から兄さんと2人で住んでるの。わからない事があったら何でも聞いてね。よろしくね。ファイ」


優しい笑顔に世話好きな性格。


何故シノエが『妖精の森』で暮らしているのかファイには最初は分からなかった。


(こんなに愛想が良くて、いい奴なら、神々から引く手、数多(あまた)じゃないのか?)


最初こそ不思議だったが付き合っている内に、何故、精霊に慣れないのかはすぐに分かった。


兄のキシルの存在だ。

キシルは、見た目も少し怖い上に無口だ。

兄キシルと絶対一緒に精霊になる。


それがシノエの望みだった。


だが、2人一緒に使える神が見付からなかったのだ。


そして今、シノエの願いは叶って、兄妹で精霊になれる機会が巡ってきた。


優しいシノエは、ファイの事を気にして春の神の誘いを断ろうとしていた。


念願だった兄妹揃って精霊になれる機会を自分の為に潰させる訳にはいかないと、ファイはそう思った。


だから、酷い言葉で突き放した。


泣きそうなシノエの顔を思い出すと今でも胸が痛たんだ。


「これでいいんだ…」


ファイは、自分に言い聞かせる様にそう呟いた。


◇◇◇


あれから、月日は流れていた。


キシルとシノエは、精霊となり四季の神に使えていた。


「今日は特別、大切なお客様が来ます。皆さん、おもてなしの準備を、お願いいたします」


そう精霊達に命じたのは、春の神 春眠。


「春眠様、特別なお客様とは、どなたですか?」


「大海の神セト殿です。セト殿は甘い物がお好きですから、甘い茶菓子を沢山用意してください」


その名前を、聞いて精霊達も緊張する。


セトは、天界の頂点に立つ天主アマテル様の末弟で、先頃では、地上で神々と人間を巻き込んだ戦が起こり、その戦に参戦した神の1人だ。


恐ろしく強い神通力を持ち、地上の戦では、謀反を、起こした神を、そして沢山の人間達を屠った事から天界では大海の暴君と言われ恐れられていた。


◇◇◇


天界では珍しい黒い天馬に乗って、春眠の屋敷へとセトがやって来た。


海の様に青髪、珊瑚の様に美しい赤い瞳、春眠にも勝るとも劣らない中性的な美しい容姿に出迎えた精霊達も目を奪われた。


本人はそんな精霊達の目は気にしておらず、春眠に気楽に話す。


「やあ。春眠。久しぶり。今日は君に頼みがあってね」


「ははは。セト殿は相変わらず、せっかちでいらっしゃる。詳しい話は、屋敷でお伺いいたしましょう」


そうして、屋敷に招かれ、春眠の命令で精霊達は皆、下がった。



すると春眠は足を崩し、その美しい容姿からは想像もつかない口調で話す。


「やれやれ。やっとゆっくり話が出来るぜ!で、俺様に頼みってなんでぃ?」


「実は、植物の管理、栽培の出来る精霊を1人譲って欲しいんだけど…」


「植物の管理が出来る精霊だぁ?とうとう俺様の様に園芸の楽さに目覚めたか??」


「ううん。全然。僕が造った異界 竜宮にアマテルを招待したら、竜宮は殺風景だからって、それ以来、沢山の植物を送って来るんだよね。で、その植物を、人魚達では管理出来なくてね」


「なるほど、それで植物の精霊が1人欲しい訳か」


「うん。君の所の精霊は皆、植物の栽培に長けているから、君の紹介なら安心して任せられるし」



「わかった。ちょと無口だが、腕はどっきりいい精霊を譲ってやんよ。その代わり…」


「その代わり?」


「ちょうちん草だっけ?あの魚の実がなる草。あれを1株、俺様に分けてくれ!」


竜宮には以前に四季の神達も招いたこがり、竜宮の料理として、ちょうちん草を使った料理でもてなした。


春眠は、その時にちょうちん草に興味を持っていた。



「天界には、色々と食べ物がし、君の屋敷には美しい草花が山の様にある。あんなのいらないだろう?」


「超いる!!絶対に欲しい!1株で良いんだ。俺様に譲ってくれ!」


精霊の件も有るので嫌とは言いにくい。


「分かったよ。1株だけだよ」


(まあ。1株だけならいいだろ)


セトは、この時、春眠の植物に対する情熱をと、ずば抜けた栽培技術を全然、理解していなかった。


たった1株のちょうちん草が後に、春眠によって品種改良されて、大量に生産され天界に出回る事になるのだ。


「「交渉成立だね(だな)」」


そう二人で握手を交わしてから、春眠は精霊を呼んだ。



先程までの態度とは比べ物にならない位に姿勢を正し品行方正に振る舞う。


「キシルを、呼んで来てください」


そうしてキシルが現れた。


「失礼します…」


「やぁ君がキシルか。君の腕は春眠から聞いたよ。僕の所で働かないかい?」


「……」


「キシル。セト殿は、植物の管理に大変、困っていらして、私の所に相談にきたのです。ですから…」


「……それは以後セト様にお仕えしろとのご命令でしょうか?」


「そうです。キシル、貴方の腕を見込んだからこそ、セト殿に推薦いたしました」


「承知いたしました」


そして、この出来事が、シノエ、ファイの一つの転機となるのだった。

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