虐げられし姫は、嫌がらせに遇う
その後、大した騒ぎも起こせず時だけが流れていった。
また王宮の宴には一切、呼ばれ無くなった。
その上、秋の宴の一件で、トワの怒りを買い、リアは嫌がらせを受けていた。
リアの宮殿付きの侍女は、リアの存在を、露骨に無視し、食事も、リアの分は、部屋の扉の前に置いて行く。
置かれた食事も、まともなではなく、ゴミや虫等の異物が入れられ、食べる事はできない。
また、少しでも、外出し隙を見せれば、虫の死骸やゴミなどが部屋や寝室にばら蒔かれたりもした。
トドメは、冬になり寒くなってきたが、リアの所だけ、暖を取る火鉢や隅も用意されず、寒い部屋のまま放置された。
だが、リアは普通の姫とは違い掃除も洗濯も、自分できるし虫も
比較的、平気な方だった。
子供の頃から、まともに食事も与えられなかったので、痩せてはいるが、体も丈夫だ。
祖国は北の方で、この国よりもずっと寒い。
だから寒いには慣れていて、なんとか寒い部屋でも耐えられた。
食事は、お仕着せを着て侍女のフリをして使用人の食堂で、堂々と賄いを食べていた。
人質達に与えられる料理は、高級な食材を使った料理だが、
運ばれて来る内に冷めてしまっていた。
賄いは、質素だが作りたての温かなご飯、そして王宮の一流料理人が作っていて美味く、リアは、それだけで十分贅沢な食事だと思い満足だった。
一応はリアもやられたままで黙ってはいなかった。
トワを見かけた時は、ここぞとばかりに喧嘩を売った。
だが、それでも罰っせられる事はなかった。
◇◇◇
リアは悩んでいた。
いくら、喧嘩、騒ぎを起こしても罰せられ無い。
そして何よりトワの嫌がらせは、どんどん酷くなっていく。
(このままでは不味いわ。この手は使いたくなかったけど、こうなったら陛下に直接危害を加えるしかないわ…)
ただし、これはとても危険だ、下手にをすれば護衛の者に、最悪の場合その場で殺される事もある。
祖国の状態を、見届けないままでは死ぬに死げない。
(だけど、もうこの手しか)
リアは思い詰めていた。
実行に移す前にリアは勇気付けにと、お酒を飲んだ。
侍女に変装して、仕入れた情報によれば、陛下の宮殿には大きな池があり、よくその場所を、散歩していると聞いた。
無論、陛下の宮殿には、勝手に立ち入る事は許されない。
だがリアは、その宮殿に人目を盗んで忍び込んだ。
大きな池には、手摺の無い、木の渡り橋が巡らされていて、池の真ん中まで、歩ける様になっていた。
その渡り橋に陛下の姿があった。
今なら好都合と、ばかりに陛下の近くへと行く。
どうやら護衛の者も控えていない様で簡単に近付けた。
リアは、陛下の前まで来ると声を掛けた。
「あの、陛下、ごめんなさいー!!」
「??君はリア……え?ごめんって一体なにを???」
そう聞き返した瞬間、池へと突き落された。
とても驚いたが、セトは泳げたので、泳いで浮上する。
水面から顔を出した、渡り橋を見上げ言う。
「いきなりなにを!!」
だが、そこにリアの姿はなかった。
そして、少し離れた所から水音がバシャバシャと聞こえて来る。
その水音の方に目をやれば、リアが溺れて踠いていた。
(………???……)
事態が把握出来ず、様子を見ていたら、リアは意識を失ったのか力尽きたのかわからないが、池の中へと沈んでいった。
(まさか本当に溺れてたのか?!)
セトは、再び水の中へと潜り、リアを見つけると抱きかかえ、再び水面へと浮上する。
橋の上に、リアを上げてから、自分も水面から這い上がった。