【番外】虐げられし姫は、冥府の研修会に参加する(3)
地獄の入り口には、巨大な門が立っている。
(ここが地獄の入り口かぁ~)
地獄の門近くには小さくな入り口がもう一つあり獄卒達は、そこから地獄に入るのだ。
リアは、何故、地獄の門から、入らないのか不思議に思う。
「エンラ様。どうして私達は地獄の門から入れないんですか?!」
「ああ、それはですね。地獄の門を入って、すぐの所に大きな落とし穴が有りまして、亡者が裁判で決まった地獄に自動的に落ちる仕組みになっています。ですので獄卒は門を使えないんです」
「まあ。そうだったんですか」
話を聞いて、リアは落とし穴にしろ地獄の門の前の庭といい、エンマ様はなんだか見た目に似合わず、いたずらっ子みたいな事が、好きなのかも知れないと思った。
「地獄には、八大地獄と八寒地獄の二つに分かれますが、主に八大地獄が、罪人を更正させる流刑地に使われてます。では、本日八大地獄で実技講義を開始します。講師には、等活地獄で活躍する獄卒、地獄犬のポチさんを、お招きしています」
現れましたのは、毛は白く少し耳が垂れ下がった、人間も丸飲み出来そうな位に大きな犬だった。
だが、見た目とは反対に可愛い名前に恐怖心が薄れる。
(((名前が、ポチって…)))
しかも地獄の犬は、人の言葉を喋りだした。
「あー!俺が地獄犬のボスだ!それと名前の方は忘れてくれ///」
それを聞いて、リアは不謹慎だと思いながらも少し笑ってしまった。
講義が始まろうとした時の事だった!!
「エンラ様、大変です。地獄の亡者が脱走しました!!」
講義は即中止になってエンラは現場へ向かった。
「よりにもよって御神木を人質に立て籠るとは……」
エンラは、そう言っていた。
御神木の存在は、リアも知っていた。
この冥府には、桃と柘榴の御神木がある。
柘榴の実は、神々の間でも余り好まれず、冥府の神達のみが食しているが、桃の実は大変な人気で、天上の神々もこぞって欲しがると言う。
それを故、桃の木は特に選ばれた鬼達だけが、御神木に近づけ世話をしていた。
研修会に来ていた、新米の鬼達の中には野次馬根性で現場を見に行く者もいた。
リアも気になり野次馬の群れの中に付いて行く。
「ここに登ると桃の木の真下だからよく見える!」
地獄で働く鬼は、そう言うと丘の上を昇って行く。
(私も……)
しかし、丘の反対側は、急な崖になっていて意外と危険な場所の様だ。
リアは、他の鬼達の様に下を覗く。
桃の木を取り囲む様に、武器を持った大鬼達が沢山集まっていた。
逃亡者とおぼしき人間の男は、大鬼から取り上げたと思われる金棒を持って桃の木の元に立っている。
「道を開けろ!、オレを生き返らせろ!この木がどうなってもいいのか!!」
御神木の前には、既にエンラが到着ていた。
「あ、エンラ様!」
「この度は申し訳ございません」
鬼達は、エンラに道を開けながら必死に詫びる。
エンラは、そんな鬼達を睨みつけながら静かに言う。
「地獄から逃亡されただけでも、大変な失態ですが、さらには御神木を人質に取られるとは、御神木に傷一でも付いたら、貴方達、後で覚悟しておいてくださいね」
「ひっ~~~!!」
鬼達の声にならない悲鳴が上がった。
「しかし取り囲んで居ても拉致があきませんね……。何か策を考えねば…」
現場は緊張感に包まれ膠着状態が続いている。
リアは、そんな状態を上から見ていたが、崖のすみに近づき過ぎたのだろう。
突然、足を滑らせてしまった。
「きゃー!!」
リアは、犯人達のいる桃の木にまっ逆さまに落ちていく。
リアの体は桃の木の枝に引っ掛かりながら、逃亡者の上に落ちる!!
「ギェェー!!」
突然の出来事に周囲は驚いて騒然となった。
最初に、冷静を取り戻したのはエンラだった。
「今です。逃亡者を取り押さえなさい!」
「「「あ!はいっ!」」」
そうして、鬼達は逃亡者を取り押さえ、逃亡事件はあっけなく解決したのだった。
「いた~た。ドジったわ…」
(それにしても、かなり高い場所から落ちなのに、怪我もないし、逃亡者が下敷きになってくれたお陰て助かったわ……)
慌てて起き上がり、周囲を見渡すと皆がリアを注目している。
「えっと……すみません。お邪魔してしまって……」
またヤラカシてしまった。リアはそう思い恥ずかしさで顔が赤くなる。
「いえ。リアさんのお陰で、逃亡者の身柄を確保出来ました。リアさんお手柄です!裏から回って逃亡者、目掛けて飛び込むなんて大胆な作戦ですね。素晴らしい」
「えっ??お手柄??、作戦?ち、違いますよ!!野次馬な上に、ドジっただけなんですが……」
だが、周囲はリアの話なんて誰も聞いていない。
「姉さん、流石です」
更には地獄で働く大鬼達からも驚きの提案をされる。
「あ、あの、助かりましたし。我々も、雑用の官吏達の様に姉さんとお呼びしていいですか??」
(う~ん、困ったわ)
やめてください。と言っても鬼達は聞いてくれない事はリアの経験から確信出来る。
「ええ。皆さんの呼びたい様に呼んでください」
投げやりにそう答えたが、鬼達は気にも止めずに喜んでいる。
現場の野次馬達は、あっという間に散り散りになって行く解散して行く。
リアも講義の部屋に戻ろとした時、桃の木から呼び止める声が聞こえてきたのだった。




