虐げられし姫は、天国で暮らす(1)
リアを捕らえた強面の鬼達は仕事に戻り、リアの世話をしてくれたのは、可愛い少女の鬼達だった。
彼女達はリアの怪我の手当てをしてくれたり、着物を用意して、着替えを手伝ってくれたりと忙しいく動き回る。
リアは、このやさしく可愛い子供の鬼すっかり気を許してしまう
「ありがとう。小さいのに働いていて偉いわね」
だが、その小鬼は困った様にリアに言う。
「あ、あの私達は、小鬼族と言って、これでも成人の鬼なんです……」
「え?本当に??」
「はい。私達、小鬼族は、大鬼族と比べ力は弱いのですが、小回りが利くため、この冥府で雑用係として働いています」
どこをどう見ても可愛い少女にしか見えないが、どうやら大人の女性だったらしい。
「ご、ごめんなさい。失礼しました」
「いえ。間違えるのも仕方ありません。ではこちらの物は裁判に必要ですから預かりますね」
そう言ってリアが着て来たボロボロの着物やイルカの指輪を、どこかに持って行こうとする。
ボロボロになった着物でも、汚れを落として、仕立て直せば再び着られるし、イルカの指輪はリアに取っては、一番大切な宝物、手元に置いて起きたかった。
「あ、待って、その着物も指輪も私にとっては、大切な物なんです。返してもらえませんか?」
小鬼の1人が、困って様にリアに答える。
「死者が現世から身に付けて着た物は、罪の重さの計りにかけてから、捨て場に処分するのが規則なんです。ですから、これをお渡しする訳にはいきません」
規則だと言われれば、リアには何も言えない。
その時だった。
「リアさんが持っていて構いませんよ。リアさんの持ち物は、全てお返ししなさい」
エンラは、小鬼に命令する。
「ですが、それでは規則が」
小鬼はその命令に戸惑ったが、エンラの命令には逆らえずリアに返した。
「ありがとうございます。」
父の性格を考えれば、リアを他の死者と同じ扱いをして裁いたりはしないだろうと思う。
取り上げても無意味だと判断した。
「ですが、リアさんが現世から身に付けてきた物は、今は実体化してますが、やがては消えてしまいます」
「それは、どういうことですか?」
「人は身、一つで生まれ、死ぬ時も身、一つで死にます。
しかし冥府に裸で、こられても困るので、父が神通力を使い現世で最後に身に付けていた着物や装飾品を死者は身に付けて冥府に来る様にしてあります。
しかしその神通力は時間が立つと効果が消えてしまいます。
ですから冥府の入り口で着物を死者に配布しています。実体化さた衣類は、死者の思念が宿っているので、その思念を利用し死者の現世での罪の重さを事前に量ります」
「そうですか…じゃあこの着物も指輪も時間が、立つと消えてしまうんですね……」
リアは、その話を聞き暗い顔になる。
「はい…。それから話は変わりますが天界に居る父に連絡が取れました。
叔父上もリアさんやお嬢さんの話を、父から聞き地上に戻られましたから、お嬢さんの救出は叔父上がする筈です。だから心配はいりません」
「陛下が?」
「はい」
「そうですか!よかった……」
指輪の事で落ち込だが、陛下なら、きっとセリを助けてくれる、リアには嬉しい知らせだった。
「それで、リアさんの今後の事ですが、それは間もなく帰って来る父が決めます。それまで冥府から、絶対にでないでくださいね。人の魂は、地上に出ると咎人になってしまいます。」
「咎人ですか?その化け物は、以前、襲われた事があります。あれが人の魂から生まれるんですか?」
「はい、そうです。本来であれば、リアさんの様に非業の死をとげた者は、地上に未練があり、死の自覚もなく、ずっと地上に留まり、特に咎落ちしやすいのです。ですが不思議な事にリアさんの魂は、地上で迷わず、冥府へとやって来た。どういう事情なのかは分かりませが、不幸中の幸いでした。
もしリアさんが咎人になってしまったら、それを冥府に送るのは叔父上の役目。そして冥府に送られて来た魂は、即座に地獄の最下層に封じられ、そこで永遠に地獄の業火に焼かれ続ける罰を、受けるのです。咎人になった魂には救済も転生もありません!」
その話を聞いてリアはゾッとする。
「分かりました。約束します。冥府からは決してでません」
そうして、リアは大人しく、冥府の統治神であるエンマの帰りを待つ。
冥府で数日が過ぎた頃、リアが地上で着ていた着物や指輪は本当に消えてなくなってしまった。
覚悟はしていたが、実際にイルカの指輪が失くなってしまったのは、セトとの本当に縁が切れてしまった様に思え悲しかった。
それに毎日、何もせず部屋に引きこもっていれば悪い方にばかり考えが及ぶ。
地上に残して来たセリは、今どうしているのだろうか?
無事に助け出されのか?
1人ぼっちで泣いていないだろうか?
お腹を、空かしたりしていないだろうか?
また、セトも約束を破って王宮を、勝手に去り怒っているのだろうか?
それとも、もう死者となった私なんて忘れてしまっただろうか?
セトは娘のセリが生まれ事すら知らない。
突然、出来た娘を受け入れて育てくれるだろうか?
そんな答えの出ないことばかりつい考えてしまうのだった。




