虐げられし姫は、変装をする
洗濯場には、すでに数人の下働きの女達が洗濯をしていた。
「こんにちは」
リアはそう挨拶をして洗濯を初める。
すると、いかにも手慣れた手付きの古参の侍女が、リアに話かけてきた。
「あんた、見かけない顔だけど、新入りかい?」
「はい。今日から人質として王宮に入りした王女様の侍女とし働く事になりした。リズです。よろしくお願いいたします」
リアは、本名は不味いと思い、とっさに偽名を使って挨拶する。
「へぇ~。人質なんて入ってたのかい?まあ、あたしの耳に入ってないって事はたいした国のもんじゃないね」
確かに、祖国はいつ潰されてもおかしくない小国だ。
「ところで、お仕着せは、まだ貰って無いのかい?」
「ええ。色々、皆さん忙しい見たいで…」
侍女でも無いリアにお仕着せが支給されるはずも無い。
「あたしが、貰って来てやるよ」
そう言うとその侍女はどこかへ行ってしまった。
しばらくすると、新品のお仕着せをリアにくれた。
リアは、お仕着せを見て感動する。
「流石は、大国の王宮!!お仕着せすら超立派ですねー!」
「あんた、どんだけ田舎にいたんだい?」
お仕着せは新品な上に、しっかりした生地が使われ、
質素だが、リアの持ってきた着物よりもよかった。
「本当にありがとうございます」
洗濯を終えて、早速、部屋でお仕着せに着替える。
そしてお仕着せを着て、侍女のふりをしながら、王宮を堂々と歩く。
この国の王宮は想像以上に立派で美しい美術品や装飾品に溢れていて、あまりにも祖国とは違うので、リアは、とても驚くのだった。
すると、王宮に使える身分の高い貴婦人や女官達が、ざわめき初める。
「まあ、陛下ですわ」「相変わらず、お美しいこと」
どうやら、この国の王様が近くにいるらしい。
王様の名前は、セトと言うらしいが、名前を呼ぶのは不敬にあたる為、皆は『陛下』と呼んでいる。
貴婦人達の視線が集まる場所にリアも目をやる。
海の様な青い髪、赤く宝石の様に美しい瞳、中性的な顔立ち、この世の者とは思えない、美しい青年だった。
リアも、その美しい容姿につい見惚れてしまう///
(女好きの醜いおっさんだと思ってたけど、想像と違うびっくりだわ!でも、あんな容姿の上に、権力、財力もあるとくれば、愛人でもなりたい女は山程いそうね)
その後も、一通り王宮を見て回った。
ー数日後
王宮では、秋の収穫を祝う宴が開かれるらしい。
人質とはいえ、他国の王族であるリアも宴には招待されている。
(待ってました。これでようやく祖国が救われる日が来たわ)
ここ数日で、色々と調べた結果、陛下は未だに独身で王妃はいないが、結婚間近と噂される宰相様の親戚の有力貴族のお嬢様の恋人がいるらしい。
そして女官として、王宮入りしていて女達を取り仕切らせている。
当然、この宴にも出席するし、事前に顔も確認済みだ。
その人に無礼を働けば、きっと陛下も黙ってはいないだろう。
(さぁ、作戦開始しますか…)
◇◇◇◇
王宮の庭ー 宴の会場
宴は、華やかで、大規模におこなわれ、沢山の人々で溢れおり、リアの想像以上だった。
(なんてすごいの、陛下の恋人見つけられるかしら…)
だが、思ったよりも恋人と噂される、お嬢様を見つけるのは容易だった。
周囲も、次期王妃として、一目置いていて、とても目立つ存在だったからだ。
そこへ、リアは杯を持って後ろから近づいて、杯の飲み物を、そのお嬢様の着物にぶちまけたのだった。