虐げられし姫は、風邪を引く(1)
「うん。着物とか帯とかお飾りとか、他にも身の回りの生活に必要な物…」
彼女の話を聞けば、祖国では、虐げられ、着物や身の回りの物も、もろくに持っいないと思ったからだ。
「後、こちらは急がないけど、婚礼の衣裳ね」
「こ、婚礼?!! それは、どなたので?!」
ハフサは、それほど頭が回らない男ではない。
主が婚礼の衣裳と言えば、主と相手の女性の衣裳だろう。
急に女性の着物や身の回りの物を、用意するのも、
その結婚を考えている、女性に贈る為だという事は、さっしがつくがセトの口から答えを聞かないと信じられない…。
「もちろん僕と妻になる女性だよ」
だが、返って来たのは思った通りの答え。
主の外見は、男の自分が見ても美しいと思う。
その気になれば、いくらでも女性は、よってくるが、陛下にその気がなかった。
主は、不老不死の神で、自分を生まれながらに偉大で完璧な存在と自負し、よくも悪くも、伴侶の様な存在を全く必要としていないし、そうした存在に興味を示さない。
一見、誰にでも、優しく穏やかで周りには沢山の人に囲まれいるが、一定の壁の様な物があり、それ以上誰も近づけない。
これが、人間の王様なら寿命や跡継ぎの事もあるし、色々と問題だが、地上での王様は、仮の姿、不老不死の身だから人間と違って結婚なんて必要なかった。
(その主が、奥方を迎える?!)
「どちらの女神様で?」
「ん?彼女は人間だよ」
「?!…」
どうして、突然、人間を奥方に貰う気になったのか、もはや訳がわからない。
たが、主が詳しい事情を放さない以上、根掘り葉掘り聞く訳にもいかない。
「まあ、とにかく、頼んだよ」
「かしこまりました。明日のお昼前には、王宮にお届けに上がります」
今から、急いで竜宮や天界いる、主に使えている同僚達に連絡を取りに、皆を総動員して準備して、ギリギリ明日の昼前に間に合うと計算であえて時間まで答えた。
「では、色々と準備もございますので、これで失礼いたします」
「うん。頼んだよ」
◇◇◇◇
翌日、ハフサは約束通り、王宮に着物や身の回りに必要と思われる物を用意してきた。
着物は、普段着から外出や宴に着る様な華やかな物まで沢山あり、その着物によく合う帯やお飾りの数々、髪を整えるのに必要な複数の櫛、化粧道具、それらを収納するに相応しい漆塗りの箱、衣装をしまう為の箪笥など、端から見れば嫁入り道具一式にすら思える品揃えだった。
早速リアにを呼んで渡そうと思い、人を使って呼びに行かせても、よかったが、リアがどんな所に住んでいるのか気になって、自分で呼びに行くことにした。
◇◇◇
リアは、部屋で寝込んでいた。
「…………あーー おなか減ったわ」
昨日、陛下との偽りの結婚を決めて部屋に戻った。
リアは、いつも部屋に鍵をかけて出る様にしていたが、昨日は、酔っぱらた為か、鍵をかけ忘れていた。
部屋に戻った時には、部屋の中が、かなり荒らされていた。
(やられた)と思った。
そして、今度はゴミや虫に加え、リアの着物が、切り裂かれ寝室に散らばっていた。
ボロい着物とはいえリアには貴重な私物、また、王宮でもらったお仕着せや、 継母から渡された唯一、まともな着物も切り裂かれていたのも痛かった。
取りあえず寝室から先に掃除し寝る場所を確保し、切られた着物の残骸を集め、なんとか着物をなおそう考えたが、段々と寒気がして風邪を引きそうにな体調に気付き、すぐに寝る事にした。
リアの予感は当たり、翌朝には熱があり、体もだるく寝床から起きるのが辛い。風邪を引いてしまった。
そしてトドメは、重い体を引きずって廊下に置かれた、
朝食を取りに行ったが、虫と言う異物入りで、食べられなかった事だ。
こうして、リアは、お腹を空かせながら寝ているしかなかった。
そこへ、『コンコン』と部屋の扉を叩く音が聞こえ、
誰かが部屋に入っ来るのを気配を感じリアは、身構えるのだった。