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探偵の助手をしていたぼくが地獄の獄卒なった理由 一章

作者: 駒城亜樹

スマホに書き貯めていた小説です。文書力もなく、稚拙ですが、少しでも目に止まっていただけるなら、幸いです。恋愛ではありません、悪しからず。

第1章 下界へ


「ぼく」が地獄で獄卒をするようになり、既に10年経つ。


獄卒の日課は以下の通り


[早朝]

地獄内の見回りと清掃(拷問された亡者のあれやらこれやらが落ちてるため。察してくれ)


[業務開始]

主にぼくの仕事は亡者が逃げ出したら連れ戻し、必要あれば(あまりさせてくれないが)拷問


[業務終了]

膨大な亡者のデータをまとめて上に明確に報告(内容はエグすぎてお見せできないのが残念)


[帰宅](地獄内に住込可能だが、鬼獄卒のイビキがうるさいから勘弁してもらった)

途中に先輩獄卒に捕まる。飲みながら話すのは

❬最近入ってきた新人獄卒の愚痴、亡者への拷問が甘い、俺が新人だったときはetc...❭


[ようやく帰宅]

2DK程の部屋を獄卒だからと安く借りれた。ユニットは否めないが雨露凌げるし、静かだから助かる。風呂に入ったら、明日の業務の確認、就寝。


え?サラリーマンと変わらないって?まあ、そうだろうね~


獄卒も元はキチンとした[亡者]であり[人間]だった。元々地獄には鬼の家族から生まれた鬼が獄卒になる家系が多い。


わかる人にはわかるだろうが(と言ってもわからない人間が多いのは当然だろうが)

すべての亡者がずっと責め苦にあったり、天国に行き、生まれ変わったりをしているわけではない。


中には生まれ変わりを希望しない亡者もいる。


今や地獄も[人手不足]いや[獄卒不足]であり、その様な亡者にスカウトをかけるとかかけないとか?


「ぼく」もスカウトされたかって?

まあまあ、その話はおいおいにしよう。

実は「ぼく」には獄卒になった経緯が頭から消えている。[記憶喪失]である。わかっているのは


❬ぼくは自殺をして地獄に堕ちた亡者❭と言うことだけ。


そして仲間から聞くところには、ぼくは最短で獄卒になったらしい。


それも

獄卒の中に情報通な獄卒おばばがいて、ぼくはおばばの好きな酒とつまみを入手し、気に入られることに成功

色々とおばばから聞いたのだが、お陰で記憶喪失の問題は解決した。


生前の記憶があると亡者に平等に折檻や拷問が出来なくなる為、閻魔直々に獄卒希望の人間のみ記憶を«記憶玉»とやらで頭から抜き取り、誰も知らない保管庫にしまうらしい。


長年獄卒をしているベテランでも保管庫の場所は教えられていない。記憶玉の悪用·盗難を防ぐためだ。


記憶玉も直には触れられない。

閻魔ですら特殊な手袋をしないと、触れただけで他人の記憶を読み込めるためだとか。


残念だが保管庫に行くルートは毎回変えられ、保管庫自体を変更してるらしく、おばばも知らないらしい(閻魔の空間移動能力、パねぇ)


ぼくは記憶玉に執着する理由。

10年前より前、つまり獄卒になる前の「ぼく自身」が気になったからだ。

何故記憶を抜かれたぼくは、自殺をして地獄に来たのか?ぼくは生前何をしていたのか?そして[何故自殺をしたこと自体は記憶から消えてないのか?]


色々な元人間の獄卒に聞いてみたが、皆口を揃えて[生前の記憶はなし]。

おばばも「わからん!」と一言。


考えあぐねたぼくは、記憶を抜いた張本人=閻魔に聞くことにした。

姑息に嗅ぎ回っては出世に響くことになるしね?


「閻魔様!おはようございます」

ぼくは元気に挨拶した。

「おはよう。お前はいつも挨拶が元気だな」

閻魔は機嫌が良かった。


昨日は滞りなく裁きが終わり、亡者も暴れるやつがあまりいなかったからだ。ぼくはチャンスだと思った。


「あの!」ぼくは手に汗を握った。背中も冷や汗が流れっぱなしだ。「どうした?思い詰めた顔しとるな?」閻魔も怪訝な顔だ。


ぼくは腹を決めた。

「ぼくの頭から何故自殺をした記憶自体は消えてないのか知りたいのですが、閻魔様はわかりますでしょうか?」敬語がめちゃくちゃだ。

閻魔は怒りもせず、静かに聞いていると「ふむ。やはりそうか」と一言。

「へ?」ぼくは思わず間抜けな反応をしてしまった。「あの...やはりとは?わ、わかってたんですか?」ぼくはやっと聞いた。


「そうだ。記憶玉をもってしても自殺の記憶自体は何故か消えんのだ。ワシも長年の謎でな。」

閻魔は頭にやれやれと手をやる。

「閻魔様でもわからないことなのですか?」ぼくは少し落胆していた。


張本人がわからないのを追及しても意味はない。

どうしたものか?と悩むぼくに閻魔はこう切り出した。

「そなたは気になるか?なら調査を命じたい。」

いきなりの提案に驚いた。

「調査ですか?ぼくで構わないのですか?長期は否めませんよ?」


閻魔は「補佐に任せたいのだが、あやつも激務で疲労困憊で大変だからな。それに」閻魔は言葉を切り、チラッとぼくを見ると「お前は適任だからな」


わからないと顔に書いてあったのか、閻魔は「お前は自殺をしたこと記憶している。そんなケースはあまりないからな。経験者であるお前なら、理由も探れるだろう」


費用はいくら使ってくれて構わんと閻魔は付け加えた。

今までの自殺した亡者で獄卒になった者は何人もいたが、自殺した記憶が邪魔をし、折檻や拷問に支障がきたす者が多数いて、大体の獄卒は部署異動の希望か亡者戻り(ぼくが探しても会えない理由はそこだった。)


ぼくにそれをあまりさせなかったのは記憶がそこだけ残ってるから。


ぼくは意を決した。「閻魔様からの命。しかとお受けいたします!」

閻魔は「吉報を待つ。あーそれから、これだけは伝える。もし現世で調査中、自殺に追いやった者を見つけても危害は加えんこと。」


「何故です?」


「どのみちそ奴らは地獄行きと決定しとる。立派に殺人だからな。」ふんっと閻魔は鼻を鳴らした。


「なるほど。地獄行きは逃れられないのか」何となく腹に落ちた。


「では、いつから開始ですか?」

「うむ。明日からで大丈夫か?」

「へ?そんなに早くから行けますか?」

閻魔は真顔で「行けるぞ。」と。

「ぼくは何も用意も準備が出来てませんが。」

まあまあと手を振りながら閻魔は「ワシから調査で使うものは用意させる。明日にでも補佐から受けとるように。」と言うと

「さあ、業務にかかれ。しばらくは下界に行くのだから、しっかり引き継ぎは頼むぞ」と閻魔様はこれ以上はないと話は終わった。


その日、ぼくは変わらず業務を行い、出張?の件を先輩獄卒に伝えた。皆口を揃えて羨ましい!お土産は頼む!と餞別をくれた。

後輩獄卒からは「戻るまでしっかり業務を完遂します!」と戦場にでも送り出すように敬礼までされた。

(地獄の金は亡者から没収したものなので、現世で買い物は可能)

良い仲間に恵まれたぼくは幸せ者だ。


明くる日、出発日


閻魔様の元に向かうと「おはようございます。時間通りでしたね?」と補佐兼秘書の菊さんがいた。

菊さんは長年、獄卒として活躍してきたが、手際が良く頭の回転が速いため秘書に昇進。

今や閻魔様の裁きの補佐も勤めている。

「閻魔よりこちらを預かってます。どうぞ中を改めください」

現世ではジェラルミンケースのような物を受け取り中身を見る。

中には書類(調査すべき内容)、鏡(通信機器)、それから謎の液体が入った瓶。青色の液体だが全くわからない。

「あの....この液体は?」

菊さんは「閻魔より預かりました。それを飲むと効果がある間、現世の方に触れられます。ただし!2人まで。悪用は罰則として生まれ変わりは出来ません」ビシッと言われてしまった。


「まあ閻魔よりご褒美ですよ。なかなかないですよ?閻魔が現世の人間に触れて良いなんて。お会いしたい方がいるなら尚更。」

羨ましいですと呟く彼女。

「調査内容は逐一報告を。トラブルがあっても素早く連絡ください」口元に笑みを浮かべ菊さんは告げた。


「下界の入り口まで案内します。連絡があるまで戻れませんので、戻る際は必ず連絡を。必ずですよ?」と念を押される。


「わかりました!行きましょう!」とぼくに

「あー。待ってください!その姿と格好はだめです。こちらを。」と下界向きの服と帽子?


「頭に角が生えてきましたね?獄卒になってきてる証ですね」

あ!と頭に手をやる。獄卒になった人間は地獄で食事をしていくと鬼ような角が生えてくるらしい。ぼくも地獄の住人になったんだと自覚する。


「さあ、着替えてきてください。終わったら声をかけてくださいね。」と菊さん。

別室でぼくは着替え始めた。デニム、ストライプのシャツ、カーキの靴、黒のキャスケット。

生前のぼくもこんな格好だったのだろうか?そんなことをぼんやり思う。

「着替えは済みましたか?」

いつの間にか菊さんが傍で声をかけてきた。

「スミマセン!終わりました」と

慌てて菊さんに姿を見せると、少し彼女は驚いたが、すぐに普段の彼女の顔に戻ると「では、行きましょう」と移動開始した。


下界への鑑。

地獄の片隅にこんな場所があったのかと驚いた。

「さあ、ここに」と鑑の前に立った。「◉◑▶◀◣◎◇」何かの呪文?のような物を唱える菊さん。


すると鑑がひかりだし、ぼくは鑑に吸い込まれるように下界に出発した。


この時、ぼくは知らなかった。

自殺をした原因と自殺に追いやった人間を知ることになるのを。

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