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Episode:97

 哺乳瓶の数は4つ、コップの数は14。けどここにいるの子供は、あたしを含めて15人だ。しかも哺乳瓶を使う子を除くと、11人分で足りる。

 だとすれば、残る3つは――。


 全部のコップをざっと見て、あたしは確信を持った。微妙に違うコップのデザインは3種類、ひとつだけのと3つお揃い、あとの残る10個は同じだ。

 もう、意味は明らかだった。

 まず揃っているほうを子供たちに配る。


「おねえちゃん、これ、もっと!」

「ごめんね、そのお菓子はもうないの。こっちでいい? それから、ちゃんとミルクも飲もうね」

「うん」


 よっぽどおなかが空いてたんだろう。みんな必死なくらいに食べて、飲んでいる。

 全員にミルクを配り終えてから、あたしもひとつ手に取った。もちろん、ひとつしかないデザインのものだ。

 そして、なるべくさりげなく、犯人たちに声をかける。


「あの……ミルク、飲みませんか? 余ってて……」

「うん?」

 犯人たちの視線がこっちへ向いた。


――上手くやらないと。

 ヘタなそぶりを見せたら気づかれて、すべてが水の泡になる。


「余った? なんでだ」

「すみません。でも、余って……。

 たぶん看護士さんが……多く作ったんだと、思うんですけど……」

 よく分からないけど困っている、そんな感じが出るように言う。

 犯人たちが顔を見合わせた。


「その、置いておいても、悪くなっちゃいそうで……」

 あたしが言葉を続けると、もう一度犯人たちが互いに視線を交わした。


「まだ暑くもないのに、悪くなるか?」

「ここは暖房入ってるからな。そのうち酸っぱくなるだろ」

「じゃぁ、飲んじまうか」

 3人がそれぞれ、コップに手を伸ばす。


「でもよ、No1から絶対飲み食いするなって、言われてるぜ?」

「そうだな……」

 犯人たちが躊躇った。


――ダメかも。

 でもそれを見届ける間もなく、子供たちがまた話しかけてきた。


「おねえちゃん、ねむい……」

「おなかいっぱいだし、もう夜だもんね。

――ほら、ここに寝て」

 目をこすっている子を寝かせて、毛布をかけてあげる。


「あたしもねむい……」

「うん、いいよ。おやすみ」

 子供たちが、次々と丸くなった。


「ったく、ガキは呑気だな」

「でも、ようやく静かになったぜ」

 そんな言葉を聞きながら、あたしも最後に膝に顔をうずめる。

 時間まで、あと1時間弱……。






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