Episode:94
◇Rufeir
「――俺だ。隠れてたガキを見つけた」
「まだいやがったんですか」
声と一緒にドアが開く。
怯えたいくつもの瞳が、あたしの方へ向いた。
――ひどい!
予想外の状態に、一瞬呆然とする。
中は、予想外の状態だった。
確かに犯人は、イマドからの情報どおり3人だけだ。
でも、問題はそんなことじゃない。
「その辺に座れ」
あたしを引き取った?犯人がそう言ったけど、無視した。
太刀置いてガウンを脱いで、やるべきことに取りかかる。
「ほら、お洋服脱いで!」
いちばん近くにいた子の洋服を、まず脱がせた。
犯人たちは人質にとっただけで、この子たちの面倒は一切見なかったらしい。
恐怖でまだ泣いている子、もう泣き疲れてうずくまっているだけの子、転がされたままの赤ちゃん……。
それにどの子も、下着を汚してしまっていた。トイレにさえ行かせてもらえなかったんだろう。
ともかくひとりづつ汚れたものを脱がせて、棚にあったタオルで身体を拭いていく。
「お前、何をしている!」
「綺麗にしてるの!」
思わず言い返した。
「何もするな、黙って座っていろ!」
「いやよ!」
犯人のひとりがあたしに銃口を向けたけど、どうということはなかった。この子たちをこのままになんてできないし、だいいち安全装置をかけたまま――間違って人質の子供を撃たないためだろう――の銃を向けられても、何も怖くない。
そのまま数秒睨みあう。
「――No.5、構わん」
睨みあいの最中に、横から声が割って入った。
「こいつに世話をさせてやれ。そのほうがこっちも楽だ」
「――わかりました」
銃口が下げられる。
代わってさっき命令した人が、あたしのほうへ来た。
「ガキどもの世話はさせてやる。だが、ここから出ようとしたりはするな」
うなずいてだけ応えると、またその人は入り口近くへ戻った。
でもこれで、この子たちを少しでもマシにしてあげられるだろう。
「おねえちゃん……」
「大丈夫、大丈夫よ。ほら、あなたもお洋服脱ごうね」
幸いここが倉庫なせいか、壁際の棚にはいろいろなものがあった。赤ちゃんのおむつもあるし、シーツや毛布も積み上げられている。
「ごめんね、お洋服ないから、これを着てて」
床に毛布を敷いてシーツや何かで身体をくるんであげると、この子たちの表情が少し和らいだ。
赤ちゃんたちも毛布をたくさん敷いて、その上にちゃんと寝かせる。
ただ嬉しいことに、どの子も暴行された様子はなかった。服が汚れたまま放置されていたほかは、あざや傷跡は見当たらない。
念のために、訊いてみる。
「痛いこと、されなかった?」
「うん」
どの子も同じ答えだ。
怖い目にあって怯えてはいるけど、どうにかそれだけで済んでいる。