表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/121

Episode:93

「――食いものだけは、忘れねぇの」

 イマドが残念そうにつぶやく。


「子供たちに渡るんです。少しは我慢するんですね」

「そりゃそうですけど……」

 先ほども食べていたというのに、またおなかが空いているらしい。


「これ片付いたら、なんか作っかな?」

 早くも事後のことを考えている。


「買ったほうが、早くないか?」

「それ以前に、調理室が閉まっているでしょうね。

――これは渡しておきます」

 タシュアはルーフェイアからの精霊を、後輩に差し出した。


「これ使ったら、毒食らいそうだな……」

 手渡された精霊を眺めながら、イマドがひとりごちた。頭で分かっていても、毒々しい色合いには抵抗があるらしい。


「嫌なら、やめてはどうですか?

 もっともそれを後で聞いたら、ルーフェイアが泣くのでしょうがね」

 後輩がため息をつく。


「先輩、少しは気が晴れました?」

「何故私が、気晴らしをしなくてはならないのです」

「………」

 面倒になったのか諦めたのか、結局イマドは無言で精霊を憑依させた。


「おそらく、毒に対して耐性があるはずです。

 あなたに判断がつくかどうか分かりませんが、ともかく確認だけはするように」

「毒と炎ですね、コイツ。見た目のわりに、なんか大人しいや」

 答えを聞く限りこの後輩は、きちんと精霊を扱えているようだ。


(意外、といいますか)

 ふつうは自分のものであっても、扱えるようになるまでにそれなりの訓練が要る。なのに他人のものを、それを訓練もなしに扱えるあたり、天賦の才があるのかもしれない。

 精霊の他には包みの中は、メモが1枚入っているだけだった。


(2159、3・7・8・12/R、E-Ex……なるほど)

 傍目にはただの数字と文字の羅列だろうが、タシュアにはきちんと意味が通じる。

 気づいたシルファも、メモを覗いた。


「予想通りだな」

「ええ」

 彼女も上級傭兵だ。説明するまでもない。


――イマドには、説明が要るかもしれないが。

 だがこの後輩も、要領はいい。既に作戦自体は、話の中から把握している。

 あとは実際に動く段階で、どれほどミスをせずに済ませられるかだった。


(まぁ、問題はないでしょうが)

 立てた作戦どおりに動ければ、まず間違いなく制圧できる。

 なによりシルファの正上級傭兵としての力量はかなりのものだし、イマドのほうも曲がりなりにも学年次席だ。


 またルーフェイアも、ミスをするとは思い難い。

 絶対とはさすがに言い切れない――そもそも何事も、『絶対』などありえない――が、十中八九まで大丈夫と言えそうだ。

 タシュアが視線を向けると、シルファとイマドもうなずいた。


「2人とも分かっているとは思いますが――ここでもう一度、作戦の詳細を確認します。いいですね?」

 2人がまたうなずく。

 それに応えて、タシュアは説明を始めた。


――万にひとつも、間違いのないように。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ