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Episode:09

「イマド!」

 後ろへと振り向く。

 出てくる人に混じって、学院に入学した時からずっと目にしている姿があった。


「悪りぃな、わざわざ迎えに来てくれたのか?

 あ、先輩たち、こいつのお守してもらってすいませんでした」

 イマドが頭を下げる。


「お守りをしていたわけではありませんね。まぁ、手がかかったのは確かですが」

「ごめんなさい……」

 いつも迷惑ばかりかけている自分が情けなくて、また涙がこぼれた。


「ですから、もう何度も言ったはずですが」

「先輩、言うだけ無駄ですって。こいつ、言い返す代わりに泣くんですから」

「……なるほど」

 隣でやり取りを聞いていたシルファ先輩が、納得したようにうなずいた。


「タシュアの毒舌の代わりに、泣くわけか」

「シルファ、何が言いたいのです」

「あ、いや……」


 先輩が口篭もる。

 タシュア先輩の言葉には、シルファ先輩も言い返せないみたいだった。

 もっともタシュア先輩に平気で言い返せる人がいるとは、ちょっと思えない。


――母さんはやったらしいけど。

 ただ母さんの場合は、言い返すどうこう以前に常識を無視しているから、迷惑のかけ通しだったんだろう。


「え〜と先輩、取り込み中申し訳ないですけど」

「別に取りこんでなどいませんが」

 この言葉にも、先輩は見事に切り返す。

 でもイマドはけろっとしているから、こっちもある意味凄いかもしれない。


「それはともかく、俺、昼メシ食いに行きたいんですけど」

「どうぞ」

 一言で終わって、一瞬呆然とした。


「あの、先輩たちは食べないんですか……?」

 信じられないほど食べる――イマドもだけど――タシュア先輩が、お昼抜きで持つとはとても思えない。


「誰も食べないなどとは言っていません。イマドに食べに行っていいと言ったんです」

「ご、ごめんなさい!」

 鋭く言われて、思わずあたしはすくみ上がった。

 また涙があふれてくる。


「――シルファ先輩、これ何度目です?」

「たぶん……午前中に一緒になってから、10回は超えてると思うが……」

「なんだ、まだ記録更新ってわけじゃなさそうですね。

――ほら、顔上げろって。あとでお土産やるから」

「あ、うん……」


 言われてあたしは顔を上げた。

 不思議だけど、イマドの声を聞くと落ち着く。


「物でつられるとは、まさに1年生ですね」

「………」

 またタシュア先輩に鋭く言われて、自分が情けなくなった。

 涙が止まらない。


「タシュア……」

「先輩……」

 イマドとシルファ先輩とが、ため息をついた。


「あ〜もう、ともかくメシ食いに行きません? こんなとこで突っ立ってるのもなんですし」

「そうだな。

――タシュアも行くだろう?」

「シルファがそれでいいのでしたら」

 気が付くと、みんな一緒に食事することになったらしい。





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