表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/121

Episode:89

(人を見かけで判断すると、ロクなことにならないのですがね)

 そのツケは後ほど、犯人たち自身が支払う羽目になるだろう。


 その後もしばらく、病棟内はざわついていた。どうも中へ入ったルーフェイアが、またひと騒動起こしているようだ。

 じき、看護士の動きが激しくなる。


「今度は、何が……始まったんだ?」

「なんか、ミルクっつってるみたいですよ?」

 同じ言葉をタシュアの耳も捉えていた。他にも切れ切れに聞こえる単語を合わせると、「子供たちにミルクと食べ物」と言うことらしい。


「連中、チビらの面倒、見る気になったっんですかね?」

「テロリストの態度が変わったと言うよりは、ルーフェイアの要求が通ったのでしょう。

 ここまで来て、彼らが態度を変えるとも思えませんから」


 他人のこととなると向こう見ずなルーフェイアだ。中へ入った途端に自分の身のことなど忘れて、要求を出したに違いない。

 そのうち例の主任看護士が、この部屋へも来た。


「ごめんね、食べる物持ってる?」

 タシュアがうなずく。

「一応、あります。

――この話は、ルーフェイアの要求ですか?」

「え?」


 訊かれた主任が怪訝そうな表情になった。この辺りのことは、さすがに知らないらしい。

 そもそも犯人側も、こういうことはあまり告げないだろう。


「いえ、こちらのことです。それよりこの件に関して、犯人はなんと言ってきていますか」

「『赤ちゃんにミルクをよこせ』って言ってきたんだけど、他の子もいるでしょう? だから入院患者さんから、お見舞いのお菓子とかを集めてるのよ。

 一緒に渡しちゃえば、まさかダメだとは言わないだろうし」

「なるほど……」


 こういった患者に関することは、とっさでも頭が回るようだ。

(さすがに、看護のプロということですか)

 ともかくこれで、子供たちも飢えた状態から開放される。


「それで悪いんだけど、食べる物、どこ?」

「そこの台の上の、紙袋がそうです」

 言いながらのタシュアの視線を受けて、シルファがその紙袋を看護士に手渡した。


「ありがと、助かるわ。これだけあれば、何人分かになるだろうし」

 主任が中身を見ながら、安心したように言う。

 その彼女へ、タシュアはまた質問した。


「ところで子供たちには、何か飲み物も渡すのですか」

「赤ちゃんの粉ミルクがあるから、それを牛乳代わりにあげるって言ってたわ」

 答えに、視線を落として僅かに考え込む。


(――使えますかね)

 カウンターテロでよく使われる方法が、ここでも実行できそうだった。

 主任へ視線を向けなおす。


「睡眠薬は、病棟にありますね?」

 彼女の表情が、やや険しくなった。

「確かにストックはあるけど……あげないわよ。だいいち、ドクターの許可が要るんだから」

「欲しいなどと、私は一言も言っていませんが」

 毎度のタシュアの毒舌に、主任がため息をつきながら訊ねる。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ