表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/121

Episode:88

◇Tasha Side

 唐突に爆発音が響いた。

 シルファがはっとしたように顔を上げる。


「今のは――!」

「普通なら突入のための陽動でしょうが――時間が早いですしね。

 恐らく、上級傭兵がどこかに待機するのでしょう」

 何か行動を起こす際には、相手の注意を逸らすのが常套手段だ。

 案の定、いくらも経たないうちに次の行動があった。


「来ましたか。割合まともな人間が作戦を立てたようですね」

 外の投光器が消えたのだろう、外が暗くなっている。

 だが偶然全ての投光器が消えることは、まずありえない。つまりこれも――故意だ。


「このやり方、イオニア先輩か……?」

 シルファがとある女性上級傭兵の名前を挙げた。確かにタシュアの知る限りでも、彼女は緻密な戦術を立ててくる方だ。


――とんでもない性格だが。


「いまのうちに、どこかへ潜入するんだろうが……やはり、屋上か」

「そこと、非常口の外とでしょうね」

 言いながら耳を澄ます。


 開けておいた窓――イマドは嫌がったが――から微かに、羽音が聞こえた。どうやら巨鳥が何羽か、屋上へと到達しつつあるらしい。

 そこで待機して、時間になったら懸垂降下、という作戦なのは間違いなかった。


(――編隊で来ては、隠密とは言い難いのですがね)

 とは言え巨鳥で運べる人数は限られているし、かといって少数で往復していては、やはり見つかり易くなる。最善とは言えないが、おおむね次善の策だ。


「――速ぇ」

 何故か壁のほうへ視線を向けていたイマドが、感嘆の声を漏らす。

「ルーフェイアなのか?」

 シルファの問いに後輩がうなずいた。


「もうあいつ、病室に潜り込みましたよ」

 どこをどう見てそうなるのかは分からないが、嘘ではなさそうだった。ともかくこの後輩は、ルーフェイアのことならよく把握している。


「おかしな見つかり方を、しないといいのですがね」

「まぁあの子なら、大丈夫だろう」

 珍しくシルファが言い切った。彼女も以前任務を共にして、あの少女の実力は知っている。


(さて、どう出ますことやら)

 そのまましばらく待っていると、いきなり大きな物音が響いた。


「意外に、豪快なことをするな……」

「イザやるとなると、あいつけっこームチャしますって」

「確かにそうだが、それにしても、もう少し……」

 廊下では当然のことだが、不審者を咎めるテロリストの声が上がっている。


「誰だっ!」

 だが驚いたことにそれを、別の声が遮った。

「待って! 病室はあたしが行くわ」

 例の主任看護士だ。


 その後しばらくやり取りがあって、ルーフェイアはどうやら思惑通りに連れていかれたようだった。

 太刀の方も、なんとか持っていけたらしい。


(しかし、無計画といいますか)

 この状況で堂々と太刀を持っていこうというのだから、ある意味たいしたものだ。

 その一方であの少女は、他人が自分をどう見ているか意外によく把握している。普通はあの華奢な身体で猛然と太刀を振るうなど、想像も出来ない。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ