表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/121

Episode:82

「ええ、今のところはもうありません。

 それから潜入の件ですが、他言無用に願います」

「わかった。婦長だけにするわ」

「そうしてください」

 その言葉にうなずいて、主任が部屋を出てく。


「――それにしても、ルーフェイアも思い切ったことをするな」

「まぁ、あいつですから」

 シルファ先輩の言葉に、俺は答えた。


 ルーフェイアのやつは確かに大人しくて繊細だけど、反面とんでもないことを平気でやらかすことがある。

 ただ、そうなる条件はひとつだ。


――それがいいとこなんだけどな。

 タシュア先輩辺りからすると「甘い」ってことになるんだろうけど、俺はあいつのそゆとこは嫌いじゃなかった。むしろ感心してる。


 世話はやけるし常識知らずの泣き虫だけど、ルーフェイアのやつは優しいことにかけちゃ、右に出るやつはない。

 それで人が助けられるってんなら――あいつは間違いなく、自分の命さえ差し出すだろう。

 もっとも俺としちゃ、それは願い下げだったりする。


 それからひょいと時計をみると、今度の連絡時間の5分前だった。

「――タシュア先輩、なんか外に言うことあります?」

 いちおう訊いてみる。


「そうですね、第一段階のナースステーション内の確保は、私たちでやると伝えておいて頂けますか」

「言っちゃっていいんですか?」

 さすがに訊き返す。

 そりゃ、3人して最初からやる気なのは確かだけど……。


「彼らに一番近いのは、中にいる私たちですから当然でしょう。

 あとでシルファとイマドは、口実を設けて向こうの病棟に移ってください。そうすれば、両方のナースステーションを同時に攻めることができます」


 さっき「一網打尽」ってたのは、どうもこのことらしい。しかも最後に残ったチビらの話も、ルーフェイアのやつがくるってんで片が付いたから、マジでひとまとめに終わらせられるだろう。


――しかしなぁ。


 テロリストの連中も運が悪いっつーか。

 成功させたいからケンディクで起こしたんだろけど、よりによって中にこんな先輩抱えちまうなんざ、死にに来たようなもんだ。


 もっとも死にたくなきゃやらなきゃいいわけで、その辺から絶対間違ってる。

 実言うと俺自身、あの連中にはけっこームカついてた。

 「ワサール開放」は、一応分かる。んで変えるためになんかしようっつーのも、分かんなくない。


 けど連中、ワサール以外の人間は、虫けらと同じ扱いだ。その想いがさっきから、ガンガン俺には伝わってくる。

 正しいのはワサール、悪いのはロデスティオ、ついでにそれを知らんふりしてる他の国の連中も、同じ悪人って考え方だ。


――冗談じゃねぇっての。


 ンな理屈で、こっちの命を秤にかけられる筋合いなんざ、あるわけない。

 ましてや病気のチビ連中人質にして、場合によっちゃ見せしめに殺してみようなんつー話、100歩どころか1万歩譲ったって許容範囲外だ。

 まぁそのツケは、当人で払う羽目になるだろうけどな……。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ