Episode:74
装備は見てねぇから、なんとも言えなかった。ただ発射音が連続してたから、短銃じゃなくて、最新式の連射銃ってとこだろう。
魔法を駆使するシエラの傭兵隊は別として、普通の人間に取っちゃ銃ってのは、手軽で最強クラスの武器だ。正規兵と違って魔法障壁なんて、ふつうの人は張っちゃいねぇから、これで十分用が足りる。
俺ら人質の配置のほうは、考えるまでもなかった。向こうの病棟にいたチビたちが倉庫、あとはみんな、それぞれの病室に押し込められてるだけだ。
けど一応、俺は確認することにした。人質のほうはともかく、犯人連中の武器とかなるとさすがに不安だ。
「――タシュア先輩」
「なんです」
寮の部屋と変わんねぇ調子で本読んでたこの先輩が、顔を上げる。
「あの連中の武器って、連射銃だけですかね?」
「なんとも言えませんね。主力の武器がそれなのは間違いありませんが、他に持っていないとは言い切れません。
手榴弾あたりは持っていると仮定したほうが、無難でしょう」
「ですよね……」
もっともこれじゃ、分かってないのと大差ない。
あと分かってるのは――?
ひとつひとつ今までのことを思い出して、俺は気が付いた。
「先輩、連中もしかして、2時間ごとに見張り交代してます?」
「ええ」
――さすが。
けどそれを黙ってるあたりが、この先輩なんだよな……。
「えっと、毎時ちょうどでしたよね?」
「そうです。
もっとも正確に言えば、3分程前に交代要員がナースステーションから割り当ての場所へ出て、0分で交代ですがね」
「あ、なるほど……」
よく見てる。
でもこれが分かりゃ、突入ががぜん楽になるってやつだ。
「当たり前ですけど、突入するんだったらその時間狙ったほうが、いいですよね?」
「当然です」
ごちゃごちゃ質問するのが、さすがに気になったんだろう。この先輩が「何をを企んでるのか」って顔でこっち見たけど、俺は説明しなかった。
だいたいが、説明するとなったら大ゴトだ。
それから少し待つ。
(先ほどの、ケイカですが……)
案の定外から、さっきの女の人が話しかけてきた。
(今、よろしいですか?)
(だいじょぶです)
――誰なんだろな?
答えながら、少しだけ悩む。
いちおう自己紹介?は貰ってるけど、面と向かって顔つき合わせたワケじゃねぇから、なんかピンとこなかった。
もっともこゆこと出来るシュマーの人間で俺が知ってんのは、ルーフェイアのお袋ひとりだけだから、分かるほうがおかしい。
んなこと考えてるうちに、向こうから予想通りのコトを訊かれた。
(先ほどお願いしていた件を、知りたいのですが)
(えーと)
人数やら武器やら見張りの交代やら、整理しといたことをまとめて送る。
このやり方のいいとこは、こゆ面倒な話も簡単に終わるってとこだろう。微妙な位置やらなんかが、言葉以上にきっちり伝わる。
けど向こうは、これじゃ満足しなかった。