Episode:73
◇Imad
――やってくれるよな。
ベッドの上に座り込んで、俺は考え込んでた。
場所は当然病院の中。しかも、患者でもねぇのに出れなくなってるってんだから笑える。
もっとも犯人連中の気持ちは、わかんなくもなかった。
俺だってどうせやるなら、平和ボケしまくったこのケンディクのほうがいい。
向こうのベッドはいつのまにか選手交代で、シルファ先輩が寝てた。入院したはずのタシュア先輩ときたら、隣の椅子で本読んでる。
ホント、どこが病人なんだかな……。
そこまでふらふら考えが流れてから、俺はもっかい元へと戻した。
ルーフェイアのやつ、やってくれる。
今この場所は、テロリストに占拠されちまってる。当然、外との連絡手段なんざない。
なのにタイミングよく締め出されちまったあいつ、シュマーの念話出来る連中使うっつー、凄まじい手段に出やがった。
なにせ人がいい気持ちで昼寝してたってのに、さっきはそれで起こされたし。
――けど普通、考えつかねぇよな。
念話自体は案外知られてる。何より通話石が、それをベースに作られてる。ただいまはもう、そういうのが出来るヤツは、ほとんど居なかった。
原因は分かってない。通話石なんかが発達したせいで、そういうのを伸ばす必要がなくなったから、退化したっては言われてる。
ってもゼロってわけじゃなくて……たまに俺みたいのは出る。ついでに言うとお袋もそうだったから、間違いなく俺のは血筋ってヤツだ。
もっともルーフェイアのやつが言うには、なんかヴァサーナじゃ研究してる科学者がいるっつーし、親兄弟とは無関係にそゆのが産まれることもあるらしい。
まぁ世界中捜せば、それなり数はいるんだろう。
けどやっぱ、あいつの実家?となると別格だ。
なにしろシュマー家ときたら、4000年も続いてる血統書つきの家系だから、半端じゃない。しかも聞いた話じゃ、それぞれが内部か、さもなきゃ戦場で相手を見つけて来るってんだから、品種改良もいいとこだ。
ともかくそのせいなのかなんなのか、あの家にはこの手の能力を持った連中がごろごろしてて、通話石が出来る前から連絡に使ってたんだって言う。
だからとっさに、俺となら連絡が取れるって気づいたんだろう。
――けどなぁ。
なんも知らない人間が思うほど、これは便利じゃない。
特に俺はこんな接続慣れてねぇ――相手もナシに慣れたらコワイ――から、やると意外に消耗する。
ついでに1回の時間も俺じゃまだ限られてて、効率よく話を進めないと時間切れだ。
結局さっきもそれでやられて、次の時間だけ決めて終わりになってるわけだし。
にしても、閉じ込められてんのに「犯人の配置調べろ」ってんだから、やっぱ言うこたシュマーだ。
それにルーフェイアのやつじゃ、俺から訊いたコトは、絶対派遣されてくる先輩たちに話してるだろう。
つまり俺が伝えそこなったら、作戦が全部狂う。
――ンな責任、押し付けられても。
俺はけっこーこゆのは気にしないタチだけど、こうなるとちっとは怖いもんがあった。
とりあえず最初に、人数を数えてみる。
確かあの出たり入ったりしてる主任看護士が最後に言ってた話じゃ、チビらのとこに3人、廊下に4人、昇降台前にそれぞれ1人づつ、あと両方のナースステーションにそれぞれ3人以上いたはずだ。
――って、15人超えるってか?
一ヶ所でテロやらかした人数としちゃ、けっこう多い。