Episode:71
「なるほどね……検討の余地はあるわね。
ちょっとウラグ、来てもらえる?」
詳細を聞いた先輩が、ここの指揮官のウラグ先輩を呼んだ。
「なんだ、誰か可愛い子でも――おぉ、いるじゃないか♪」
「――馬鹿」
この非常時にこの先輩たち、なに考えてんだか。
まぁ緊張しまくって失敗すること思えば、このほうが数段マシなんだろうけど……。
「どうせその頭、ロクなこと入ってないんだから、黙ってたほうが身のためよ。
それで話は変わるけど、この子――ルーフェイア、だっけ? ともかくこの子が、ひとつアイデアを持って来たのよ」
聞いた瞬間、ウラグ先輩が間髪入れずに答えた。
「採用! 美少女はいつも正しい」
「――捨ててやろうかしら」
それ以前の問題のような……。
だけどウラグ先輩も、ほんとこたえない。
「俺は真実を述べただけだぞ。
それでルーフェイア、どんな案なんだい?」
「その……」
ルーフェがまた言いよどんだ。大人しいこの子、どうもこゆ場は苦手にしてる。
「遠慮なんかしなくていいんだぞ。美少女の言うことは正しいんだからな」
「は、はぁ……」
面と向かって言われて、思いっきりきょとんとしてるし。
けど気さくな態度がよかったんだろう、今度はちゃんと自分で話し始めた。
「あの、小さい子たちが、人質になってる話なんですけど……」
「うんうん」
でも話を聞いているうちに、この女の子好きな先輩の表情が変わる。
「それはダメだ!」
「――あなたさっき、採用って言ってなかった?」
イオニア先輩がすかさず突っ込んだ。けどウラグ先輩も負けてない。
「それとこれとは別だな。だいいち、美少女を危険な目に遭わせるなんて、出来るわけないじゃないか」
「あなたの馬鹿、死んでも治らなそうね」
辛辣な言葉が飛ぶけど、間違ってないとこがすごい。
だけど今回引き下がらなかったのは、いつも大人しいルーフェだった。
「あたしが行って紛れ込めば――小さい子を見張っている犯人への攻撃が、突入と同時に出来ます。
そうなれば、リスクも最小限で済むはずです」
「それは確かにそうだが……どうやって紛れ込むつもりなんだ」
確かにルーフェの学年じゃ、こういった突入時の対応なんか勉強してない。
けどそれはあくまでも、『普通の生徒』の場合だ。
「屋上へいったん上がって、それから懸垂降下でどこかの病室へ入ります。
あとは着替えて『午後に入院したあと隠れていた』と言えば、疑われないと思うんです」
もう何度も頭の中で、シミュレートしてたんだろう。この子が言った案は、実現可能な範囲だった。
それをあごに片手を当てて――なんか妙に優雅――検討しながら、イオニア先輩が質問を浴びせる。
「でも、入ったからってそれじゃ済まないわよ。突入と同時に攻撃って言うけど、あなた本当に出来るの?
それに相手は、3人いるって言ってたじゃない」
「それは……」
下を向いたルーフェが、次の瞬間動いた。