Episode:68
「子供が、どうしたの?」
「小児だけは全員、7-B病棟ナースステーション隣の倉庫に集められて、常時3人に見張られているそうです」
「――連中、やってくれるじゃない」
同感。
病室に閉じ込められてるだけっていうなら、セオリーどおり突入ってテが使える。
けど状況がこれじゃ、下手に突っ込んだらチビちゃんたちが全滅しちゃうだろう。
「ナースステーション横って言うと――この場所よね。入り口は一つ、窓はなし。
ふん、舐めたことするわ」
イオニア先輩が、建物内の見取り図を見ながら考え込む。そこへ何か報告書を持って、別の先輩が入ってきた。
「先輩、どうかしましたか?」
「あ、うん、新しい情報をこの子が持ってきたの。
――上級傭兵を全員、ここへ集めて頂戴。突入方法を再検討する必要が出たわ」
「了解です」
上級傭兵の先輩がひとり出て行って、じきに部屋が騒がしくなった。
「イオニア、お前なにやってんだよ?」
「馬鹿ね、状況が変わったに決まってるでしょ。おかげで作戦変更だわ」
「俺は聞いてないぞ」
「あたりまえでしょ。まだ話してないもの」
どうもこの先輩2人、相当相性いいらしい。
そうこうしてるうちに続々と上級傭兵が――総出だったらしい――ここへ入ってくる。
中には当然、エレニアの顔もあった。
「ロア? それにルーフェイアじゃない。どうしてこんな場所に2人でいるの?」
「ちょっといろいろあったりして。
まぁホントのとこ言えば、この子が情報持って来たからなんだけどね」
ちょこっとだけ説明する。
「情報って?」
「もう、説明あると思う」
言い終わるかどうかくらいに、イオニア先輩が口を開いた。
「遅いわね。呼んだら2分以内に揃いなさいよ。
――まぁいいわ。全員ここへ座って。
新しい情報が入ったの。けど、いいものじゃないわ」
揃ったメンバーを平然と見渡してから、先輩が切り出す。
「とある筋から、中の様子が分かったわ。説明するからよく聞きなさいよね。
まず犯人だけど――」
さすが女子の上級傭兵の筆頭と言われるだけあって、イオニア先輩の説明ときたらルーフェ以上に簡潔。
「――状況は以上。当然だけど、迂闊に突入できないことは分かるわね?
これから方法を検討するから、各自再度命令があるまでは待機。何かいい方法が思い浮かんだら、その都度ここへ知らせなさい。
じゃぁ、解散していいわ」
一旦離れてたエレニアが、また傍へ来た。
「とんでもないことになったわね……」
「ホント、敵ながら大したもんかも、この悪知恵」
こうなるとこっそりひとりづつ片付けてくくらいしか、やりようないだろう。
だいいちそれだって、かなり分は悪い。
「子供たちを見張ってる人間に気づかれずに――上手く出来るかしら」
「どうだろ」
ちょっとでも不穏な動きとか物音があれば、即座に中で皆殺しにされかねないだろうし。