Episode:65
「そしたらさ、その話もう一回してもらっていいかな? みんなのとこで」
「あ、はい」
またこっくりうなずいたあと、歩き出したあたしの後ろを、この子がヒヨコみたいにくっついてきた。
――ホント、素直でカワイイよね〜♪
タシュアに爪の垢でも煎じて、1年くらい飲ませたいかも。
ともかく一旦、待機してたとこまで戻る。
「戻りました」
元運転手(教官だけど)に声をかけると、開口一番文句だった。
「遅いぞ。しかも候補生でない者まで連れてきて、どうするつもりだ」
「す、すみませんっ!」
「――ルーフェ、謝らなくていいんだよ」
恐縮しちゃってるこの子を、そう言って安心させる。
それにしたって教官も、関係あるから連れてきたってことくらい、わかんないのかな?
「彼女ですが、事件の直前まであの病院の、例のフロアににいたんだそうです。
それと、タシュアとシルファ先輩の現在の居場所も、この子のおかげで分かりました」
「それは本当か?」
「はい」
この期に及んで嘘言うほど、ボクはひねくれてないってば。
「この子が言うには、いろいろあってタシュア、シルファ先輩、それにこの子の同級生がひとり、一緒に人質にされているそうです」
「――なにをどうやったらそうなるんだ」
教官ってば呆れ顔。
まぁ分かるけど。
「あたしに言わないでください。ともかく中に居るのは、間違いないそうですから」
それからまだなんか考え込んでる教官に、ボクはたたみかけた。
「ともかくそう言うわけですから、この子連れて指揮所へ行っていいですよね?」
こゆことは当人に説明してもらうのが、なにより早いわけだし。
「許可しよう。速やかに行って、細かい説明をこの子にさせるように」
「了解です。
さ、ルーフェ、おいで♪」
あたしの言葉に、ルーフェが本日2度目のヒヨコ。もう可愛いったらない。
そのままこの子をくっつけて、あたしは指揮所へと足を踏み入れた。
瞬間、視線がこっちに突き刺さる。
「……!」
「あぁ〜★」
勢揃いしてる上級生の、鋭い視線にびっくりしたんだろう。ルーフェったら立ちすくんじゃうし。
慌ててなだめようとしたとこへ、でもそれより早く声がかかった。
「こら、お前ら! こんな美少女を怯えさせるなんぞ、人間のやることじゃないぞ」
――それはちょっと違うような。
けどこの先輩、いい性格してるからなぁ。
「いやいや、悪かったなぁ。ちょっとみんな気が立ってるもんだから。
それでルーフェイア、何の用だい?」
「あたしの名前、ご存知なんですか……??」
いくら同じ学校とはいえ、最上級生にいきなり名前呼ばれて、ルーフェが面食らった表情になった。
――けどこの先輩、こうなんだよね。
次の言葉はもちろん予想通り。
「このウラグ、女の子の名前と顔は忘れたことはないぞ」
周囲がいっせいにため息をつく。