Episode:64
船着場の守衛さんからタシュアたち――なんだってあんな根性ひん曲がったヤツに懐いたんだか――とケンディク行ったっては聞いたけど、まさか病院に用があったとは思えないし。
しかもなんか、真剣な表情。
慌てて前のほうに陣取ってる教官(今日は運転手だった)に話し掛けた。
「なんだ、お前は。待機と言う命令が出てたはずだぞ」
「そうなんですけど、なんかルーフェイアがこっち来るんですよ」
「ルーフェイア……?」
教官が怪訝そうな顔になる。
でもねぇ、あのコ思い出せないなんて。
「ほらあの、8年生の主席で金髪碧眼の美少女!」
「ああ、あの子か」
今度は通じた。
「なんだかあの子ここにいるんですけど、話があるらしくて。
寮の部屋がいっしょであの子よく知ってますから、外へ出て相手しちゃだめでしょうか?」
「そういうことなら許可しよう。ただ、手短にするんだ」
「了解」
急いで外に出ると、案の定この子が困ったふうに辺りを見回してた。
「ルーフェ、どしたの?」
「――ロア先輩?!」
まさか実地試験だなんて思ってなかったんだろう、思いっきりびっくりした表情。
「あ〜うんとね、今日ってば実地試験。
それよりなんかあったの? キミが野次馬してるなんて、ちょっと思えないし。あとさ、タシュアとシルファ先輩どこかな?」
「あの、実は……」
ルーフェに途中まで事情を訊いたとこで、あたしも思いっきりびっくりした。
「あのタシュアが、倒れたっての?!」
「……はい」
こっくりとこの子がうなずく。
――なんだかなぁ。
竜が逆立ちして海水浴してるってほうが、よっぽど信じられる。
けどルーフェは嘘はつかない。というか、この子つけない。
「まったく、あいつに取り付くなんて、どんな風邪なんだか。
けどどうしてキミだけ、ひとりでいるの?」
「それが……」
この子の話の続きを聞いて、あたしは納得した。
「タイミングよくルーフェだけ、締め出されちゃったんだ」
「そうなんです……」
いつも大人しいルーフェだけど、今日はとりわけ元気がないみたいだ。
まぁ、無理ないかなぁ……。
自分ならともかく、大好きな彼氏が人質じゃ、いてもたってもいらんないだろうし。
「――心配?」
「……はい……」
「だろうねぇ」
タシュアなんか放っておいたってどうってことないだろうけど、この子の彼氏は上級傭兵なんかじゃない。
「まぁでも、タシュアがいるんだから大丈夫だよ、たぶん」
癪に障るんだけど。
けどあいつ、あの性格やら毒舌やらはともかくとして、実力だけは一級品なんだよね。
ただどっちにしても、ここでずっと立ち話ってわけにはいかない。