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Episode:62

◇Loa

 窓の外に見える景色は、もうばっちり暗くなってた。

――いくらなんでも、抜き打ちすぎだってば。

 暗い窓に、声にださずにぼやいてみたり。


 学院は成績さえまともなら、傭兵隊には11年生以上は簡単に入れる。

 けど、上級ってなると話は別。毎年2回くらいある実地試験に、合格しなきゃいけない。


 しかもこの試験ってのが、けっこうクセモノだったりする。なんせ大掛かりな派遣を利用して、本番で試験兼ねるってシロモノで、対策も何も立てようがない。

 加えて運もあって、自分に向いた任務とか割合簡単なのが当たって、難易度はがた落ちってこともある。


「ロア、どぉ?」

 一緒に派遣されたエレニアが、訊ねてきた。


「どぉって言われても、困るんだけど。けどレアカード取る時の方が、やっぱ楽かな?」

「それとこれとは違うでしょ……」

 なんか呆れられてるかも。

 そんなこと考えてるうちに、班長の先輩が前へ出てきた。

 全員で立ちあがって、学院式の敬礼をする。


「状況及び任務の説明を始める。着席」

 学院って傭兵学校だけど、この辺ははなんとなく正規軍なんだよね。

「本件のクライアントは、ユリアス政府だ。傭兵隊派遣の要請があったのは、およそ1時間半前。国内であることと急を要する状況のため、異例の早さでの派遣が決まった」


――確かに普段は、なかなか派遣しないよね。


 ちなみにエレニアが言うには、双方の言い値が折り合わないせいなんだとか。

 まぁ派遣業務は学院の稼ぎの目玉だから、気持ちは分かるんだけど。

 ただちょっと、ふっかけ過ぎの気もするかな……?


「ユリアス政府からの依頼内容は、病院を占拠したテロリストたちを状況次第では速やかに排除し、中に人質として捕らえられている患者及び見舞い客の身柄を確保することだ。

 建物の詳細等については、手元の資料を見てほしい」

 みんながあらかじめ配られてた資料――この借りた部屋ってば大型魔視鏡、設置されてない――に視線を落とす。


「占拠されているのは、ケンディク西総合病院の7Fだ。犯人はワサールの『森の虎』を名乗るグループ、数名から十数名。病棟の構造については設計図の通り」

 やたら簡潔な説明、続くし。


「人質の内訳は病院スタッフが40名程、患者が68名で、うち小児が14名だ。他見舞い客が未確認だが、20〜30名は――」

「………」

 こりゃ大規模だわ。

 このケンディクじゃ占拠事件だって珍しいのに、この人数は史上初だろうな。


「ちょ、ちょっと待ってください!」

 エレニアが声をあげた。


「今、小児が人質って言いましたけど……」

「その通りだ。小児科で入院していた0歳から6歳の子供たちが14名、人質の中に含まれている」

 この話にはさすがに、室内が静まり返る。


「――八つ裂きにしてやろうかな」

「ロア、説明中の私語はまずいわよ」

「あ」

 けど、思いっきりホンネ。

 幸い先輩たちもおんなじことを思ったみたいで、お咎めはナシだった。





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