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Episode:61

「申し訳ありません、グレイス様。揃えてここへお持ちするのに、15分ほどかかるそうです」

「大丈夫。時間、あるもの」

 何しろ今は、待つしかない。


「恐れ入ります。

 それとひとつ、新しい情報が入りました。人質の開放交渉が始まったそうです」

「ほんと?!」

 これはいちばん気にかかる情報だ。


「どんな感じなの?」

「食料と引き換えに一部の開放を要求したものの、かなり難航しているようです」

「そう……」


 あたしは病院を見上げた。

 辺りはもう十分に黄昏れきっていて、建物は魔光器で照らし出されている。

――もどかしかった。

 たったこれだけの距離しかないのに、何もできない。


「ほんとに、待つだけだね……」

「そのようですね」

 何故だろう? ちゃんと相槌をうってもらえて、少しだけほっとする。


 ただ本当のことを言えば、上手く中と連絡が取れても傭兵隊の先輩たちが来ても、すぐには事態は動かないはずだ。

 もちろん最後は突入だろうけど、それがいつ頃になるのか――なんの見当もつかない。


「もしよろしければ、一旦セーフハウスの方へ移動されてはいかがでしょうか。

 まだこの時期、夜は冷えます」

 ドワルディがまた、あたしを気遣ってくれる。

 でも、それを受け入れられなかった。


「ううん、ここでいい」

 何も出来ないとわかっていても、ここにいたい。

「かしこまりました。では、誰かに上着でも持たせましょう」

「――ありがと」


 少しだけ自分が微笑むのが分かった。この言葉のほうが、どんな服よりあったかい。

 でも、現実は……。

 その時、ドワルディの表情が少し変わった。


「どうしたの?」

「学院の傭兵隊が、到着したようですね」

「もう?」

 けど辺りを見回しても、それらしい人影は見えない。


「どこに……?」

「病院の敷地内ではありません。少し離れた、大型店の駐車場を利用したようです」

 報道や警察、それに野次馬でごった返すこの辺は、避けたんだろう。


「えっと、じゃぁ……あっち?」

 彼に確認しながら急いで移動すると、確かにいくつもの車両が、少し離れたお店の駐車場に停まっていた。


 紺を基調にした、何台もの大型車両。緑を基調とする、本校のものじゃない。

 本島から海を越えて車両を出すのは大変だから、ケンディク市内にある分校から、借りてるんだろう。


「思った以上に早かったですな」

「うん」

 自分の声が、少しだけ声が弾んだ。

「――あたし、行ってくる」

 傭兵隊の先輩たちに、いろいろ話さなきゃいけない。


「かしこまりました。この辺りで待機しておりますので、何かありましたら声をかけてください」

「……ありがと」

 ドワルディにお礼を言って、あたしは歩き出した。






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