Episode:56
「中にいらっしゃるお友達の皆さまに、でございますよね?」
彼が確認してくる。
「うん」
ほかに中に、知り合いはいない。
「でしたら、簡単に連絡できると思いますが」
「え?」
あっさりと言われて、意味がすぐには飲み込めなかった。
「だって、通話石も魔視鏡も……」
ドワルディが少し笑う。
「グレイス様には馴染みが少ないかと思いますが……念話を使う方法がございます。
確か中にいらっしゃるお友達の一人が、それが可能だったと記憶しておりますが」
「あっ!」
確かにその方法があった。イマドだったらたぶん、手順さえ踏めば連絡が取れるだろう。
ただあたし自身は出来ないから、頭からすっかり抜け落ちていた。
念話を連絡に使うやり方は、シュマー家では古くから使われている。
戦場には混乱がつきものだから、信頼のある通信方法は少ない。なにしろ今でも伝書鳥や、人が走る伝令がいちばんいいくらいだ。
だけど念話を使う方法なら、相手さえ分かっていればまず通じるし、距離も関係なくてタイムラグもなかった。
問題はこれを出来る人が限られることだけど、シュマーに関してはそれもない。始祖メイアがそういう人だったとかで、シュマーではかなりの率で、この能力をもった子供が産まれる。
今では確か……シュマーはほとんど、ロシュマーのほうでも半数は軽く超える人数が、レベルを別にすればこの能力を持っていたはずだ。
それから、気が付く。
「ドワルディ、イマドがそうだって……どうして知ってるの?」
「先日、カレアナ様より連絡がありまして」
「――!!」
母さんは、そうやってなんでも……!
「ああ、いえ、グレイス様、そういうことではございません」
あたしの表情に気づいたのか、慌ててドワルディが言った。
「力を持つがゆえの苦労があるはずだから、その時には手助けするようにとの仰せでして」
「え……」
何も言えなくなる。
ドワルディがまた笑った。
「カレアナ様は、本当にお優しい方であらせられますよ」
「――うん」
傍若無人で好き勝手で、平気で周囲を振り回して――でも確かに母さんは実力十分の現総領で、シュマーの誰からも好かれてる。
「いずれにせよ、そういうわけでございますので。
それよりも中と連絡を取る件ですが、専任の者をこちらへ来させましょうか?」
「………」
訊かれてあたしはためらった。
確かに中と連絡は取りたい。イマドがどうしているか知りたい。
――でも。
彼はこのことを、なるべく知られないようにしていた。
なのに、あたしが外から強引に使ったりしたら……。
「イマド、嫌がるかも……しれない」
嫌われるのが怖かった。
けどそんなあたしへ、ドワルディが言葉をかける。