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Episode:55

「開放の交渉、どうなってるの?」

「こちらはまだ、始まってすらおりません。こういった交渉自体、この国にとっては初めての経験だからでしょう。

――だからこそ、犯人グループも狙ったのでしょうが」

「でも、だからって……!」


 あの占拠されたフロアには、小児科もあった。だから当たり前だけど、具合の悪い子どもたちがたくさん入院している。

 イマドや先輩たちも心配だけど、小さい子がどうなるかが、もっと心配だった。


「お気持ちの程は良く分かります。ですが今のところ、時間待ちかと」

「そう……だね……」

 ドワルディの言うことが正しい。


 ただケンディク軍にはこういったテロを想定した特殊部隊はないから、シエラに要請がかかるのは間違いなさそうだった。

 ふっと思いついて、訊ねてみる。


「ねぇ、シエラへの派遣要請……出たの?」

「派遣要請でございますか? 少々お待ちを――ええ、もうユリアス政府から内密に要請があり、学院側も派遣を決定したそうです」

「え、もう?」

 これには驚く。


 まだ事件が明るみに出てから、そう時間は経っていないはずだ。それなのに、この時点で派遣が決まってるなんて……。

 もちろんいろいろ準備なんかもあるから、今すぐ派遣とはならないだろう。けどかなり早い時点で、ここへ上級傭兵の先輩たちが来るのは間違いない。


――誰が、来るんだろう?

 これほどの事件となると、あるいは総出かもしれない。


「それにしてもユリアス政府も学院も、案外対応が早いですな」

 ドワルディが感心する。

 もっともユリアス政府にしてみればシエラしか頼れないだろうし、学院もまさか国内の事件で、派遣をためらうことなんてできなかったんだろう。


 ただ逆に言えば、もう政府は突入を覚悟したと言うことだ。

 あとは、犯人たちがどう出るかだった。

 かといって、そう簡単に人質を解放してくれるとは思えないし……。

 考え出すときりがなかった。


 確かに中には上級傭兵のタシュア先輩やシルファ先輩がいるから、出来る限りのことはしてくれるだろう。

 でも、何もかも当てにするわけにはいかない。それに突入になった時、うまく同調できないかもしれなかった。


 こういう突入と言うのは意外だけど、ただ攻撃してもだめで、事前に綿密な計画を立ててそのとおり実行される。

 けど中の先輩たちには、これを知る方法がない。魔視鏡も通話石も、たぶん押さえられてしまっているはずだ。


 もちろんタシュア先輩が、ミスをするとは思えないけど……。

 けど連絡が取れれば、他にも中の様子を知って適切な作戦を立てることも出来る。

――使える装備、ないかな?

 シュマーの手持ちのもので、いい方法がないかと考え込む。


「なにか、問題がございますか?」

「うん……中に連絡、できないかなって……」

 そう答えると、ドワルディが一瞬だけ怪訝な表情になった。

 あたしが悩んでることが、意外だったみたいだ。





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