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Episode:51

「立てこもる前に何らかの手を打つ必要はありますね。できれば、中に火種を隠したいところですが」

「だが、どうやってだ?」

 この場にルーフェイアがいれば、患者と偽って子供たちのところへ行かせられるだろうが、彼女はあいにく病院の外だ。


「そうですね、シルファが行ってはどうです?」

「ムチャを言うな」

 年齢より幼い見かけのルーフェイアならともかく、私の体格では子供たちの中に紛れ込むなど、絶対にムリだ。


「誰も小児としてなどとは、言っていまんよ。白衣を借りて着れば済みます」

「――!!」

 冗談ではない。

 見るとタシュアが、僅かに面白そうな表情を浮かべている。


「俺もそれ、賛成♪」

 イマドまでが、喜んで話しに乗ってきた。

「絶対ダメだっ!」

 思わず口調が強くなる。

 先日のドレスでさえ恥ずかしくてたまらなかったのに、看護士の格好など想像するだけでも嫌だ。


「なんだ、ダメなんですか?」

「それは困りましたねぇ」

 だがそう言うタシュアの顔は、やはり面白がっている。

――どうしよう。

 このままでは、本当に……。


「――ちょっと待ってもらえる?」

 私が真剣に悩んでいるところを、だがちょうどいい具合に主任看護士が遮った。

「さっきから話を聞いてると、手を打つとかなんとか、いったい何をするつもりなの?」

 その瞳が鋭い。


「言っとくけど、下手にこの部屋から出て何かしないでちょうだいね。

 連中、病室の外へ誰か出たら容赦しないって言ってるから」

 私たちは顔を見合わせた。


「そういえばまだ、言っていませんでしたね。私と彼女は、一応シエラ学院の上級傭兵です。

 それからそちらの彼も学院生――何をしているのです」

 イマドのほうへ顔を向けたタシュアが、冷たいさえ通り越した――完全に呆れているのだろう――声で訊く。

 見ればイマドが、またベッドへ上がりこもうとしているところだった。


「いや、ヒマだから寝ようかなって」

 どうやら、また昼寝でもするつもりらしい。

「いい加減にしたらどうです」

「けど、今することないじゃないですか」

 緊迫した状況下でのこのやりとりには、主任看護士もあきれ返ったようだ。


「あなたねぇ、入院もしてないのに勝手にベッドを使わないでくれる?」

「んじゃ俺、今晩床で寝るんですか?」

「それは……」

 どうやら言い合いは、イマドの勝ちらしい。


「と、ともかく、もう一回よく考えないか? 少しは状況も分かったわけだし……」

「それもそうね。

――っていけない、あたしここに長居するわけに行かないわ。まだ病棟ごちゃついてるもの。

 あとでまた来るわね」

 部屋を出かけた看護士の背に、タシュアの言葉がかかる。


「でしたら今度来るまでに、犯人の人数と配置とを確認しておいて頂けますか」

「――患者らしくない患者ね。

 いいわ、分かった。できる範囲で調べとくわ」

 それだけ言うと本当に忙しいのだろう、主任が駆け足で出て行った。





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