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Episode:05

「さぁ、行こう」

 この子をうながして調理室を出、船着場まで行った。

 休みの日の、それもちょうどお昼前のせいか、案外混んでいる。


「えっと……」

「あそこが、空いているぞ」

 ちょうど船内の真中辺り、通路を挟んだ両側の席が空いていた。

「あ、はい」


 この子が素直にそこまで行って、向かって右の席を選ぶ。ケンディクへ行くときは、左舷に本島を見ながらになるから、海原の見える右側を選んだのだろう。

 私たちも後から続いて、反対側の席へ座ろうとした。

 と、ルーフェイアがこちらに視線を走らせ、心細そうな表情を僅かに見せる。


「――何を甘ったれているのです」

 隙を見逃すようなタシュアではない。ルーフェイアの視線の意味を即座に悟り、すかさず突っ込んだ。

「ご、ごめんなさい!」

 またこの子が謝る。


「1年生でも、行く子はひとりでケンディクまで行きますよ。ましてやあなたは何年生ですか」

「ごめんなさい……」

 キリがない。


 ただ私は、ルーフェイアの気持ちは分かった。

 ひとりは――寂しい。


「ルーフェイア、そっちへ座っていいか?」

「え、あの、でも……」

 泣きそうになりながら、それでもそう言うこの子が、なんだか可笑しかった。


「座るぞ」

 ルーフェイアを窓際へ押しやり、私も座る。

「あの……」

「いいんだ」

 言い切って頭を撫でると、この子がやっと少し落ち着いた。


「そうやって甘やかすから、いつまでたっても成長しないのですよ」

「ご、ごめんなさいっ!」

 私に言ったはずの言葉に、なぜかルーフェイアが謝る。


「謝る暇があるのでしたら、少しは考えたらどうなのです?」

「………」

 またこの子が泣きだした。


「ほ、ほら、動き出した」

 急いで気を逸らす。

「泣いていたら、海が見えないぞ」

「あ、はい」


 ルーフェイアが慌てて涙を拭いた。

 ほっとする。

「……♪」

 入り江から広い海へ出ると、この子が嬉しそうな表情になった。


――本当に好きなんだな。


 ルーフェイアは海が好きだった。特にケンディクの港で眺めるのが好きで、時々友だちやイマドと一緒に座り込んでいるのを、見かけることがある。

 と、タシュアが不意に口を開いた。





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