Episode:49
「大丈夫、なんだろうか……?」
遠ざかる足音を聞きながら、私は何か心配だった。もし犯人たちが口止めしていたら、絶対に説明はしてもらえないはずだ。
だが、タシュアは指摘した。
「大丈夫でしょう。婦長に許可を取るとは言っていましたが、彼女はこの病棟の主任ですから。
それに看護士が病室で何をするかまで、彼らもチェックはしきれないでしょうからね」
「あ、そうか……」
どこまでも見透かしたかのような冷静さに、舌を巻く。
そして、気が付いた。
「どうして、彼女が……この病棟の主任だと、分かったんだ?」
「名札にそう、書いてありましたが」
「そ、そうだったか?!」
どこを見ていたのかと、自分が少々情けなくなる。
「ええ。
シルファも緊張するのは分かりますが、イマドの図太さを少々見習った方がいいかもしれませんね。
――いい加減にしてはどうです」
最後の一言は、私ではなくイマドへ向けてだ。
「だいじょぶです。ちゃんと先輩の分、残ってますから」
タシュアの突っ込みに、けろりとイマドが答えた。どうも私たちがいろいろやっている間に、しっかりサンドイッチを食べていたらしい。
「まったく、少しは状況をわきまえなさい」
「ですけど、腹減って」
言いながらこの後輩は、またひとくち口に運んだ。
――確かに図太い。
学院生と言うことを差し引いても、この状況で食事が出来る人間は少ないはずだ。
というより、ひとりでさっさと食べていたり、さっきのように病院のベッドで寝ていたりということ自体が、かなり珍しいだろう。
見かけからは、そんなことをするようには見えないのだが……。
そうこうしているうちに、手に別の点滴を持って先ほどの看護士が戻ってきた。
「またですか」
よほど点滴に嫌気が差しているのか、タシュアは半分拒否状態だ。
「してあげてもいいんだけどね、これは残念ながらダミーよ」
手ぶらで病室へ行けば怪しまれるからだと、この看護士は言った。
「で、婦長には了解取ったわ。何をどう知りたいの?」
「知りたい内容は、先ほども言いましたが」
タシュアは「事実を言ったまで」という顔をしているが、看護士のほうはこの答えに気を悪くしたらしい。
「ほんとに点滴する?」
「する必要もない点滴をしようなどと、医療者が言うこととは思えませんが」
「あなたねぇ……」
険悪になりかけた雰囲気に、慌てて私は間に入った。
「す、すまない。そういうつもりじゃないんだ」
ともかく謝る。
「それでその、何が起こったか、教えてもらいたいんだが……」
「――お見舞いだと思ってた男たちがいきなり銃を出して、脅されたのよ」
どうにか機嫌を直してくれたこの看護士が、少し声をひそめて言った。
「人数はどのくらいです?」
さっきのことなどお構いなしに、タシュアが簡潔に訊く。
そんな彼を、一瞬だけじろりと見てから――それでこたえるようなタシュアではないが――主任看護士は答えた。
「うちのナースステーションへ4人、向こうの病棟に4人以上。
それと向こうとこっちの昇降台の前に1人づつ、あと廊下にも何人かいるらしいわ」
「最低でも十数人と言うわけか……」
思ったより多い。逆に言えば、それだけ向こうもプロ?ということだ。