Episode:45
――イマド、嫌だって言わないかな?
ちょっとだけ心配する。
だけどお店で飲ませてもらったのは、おいしかったし……。
でも最後の角を曲がって病院が目に入った瞬間、そんなことを考えていられなくなった。
門のあたりに、人だかりが出来ている。しかもその人たちの中には、パジャマ姿が混じっていた。
普通の人がそんな格好で、外を歩くわけはない。つまりはこの病院に入院していた、患者さんだ。
できるかぎり急いで病院へ戻る。
正門の辺りはもう、たくさんの人でごったがえしていた。その他にも続々と、中から患者さんが――中には車椅子や移動寝台で――外へ出てくる。
「あの、何が……あったんですか?」
ちょうど近くを通りかかった看護士さんに、あたしは尋ねた。
「よく分からないけど、避難指示が出たのよ。
――あ、ごめんね。呼ばれてるから」
よほど状況が切羽詰まっているのだろう、その看護士さんはたちまち向こうへ行ってしまう。
ともかくこの病院内で何かあったのは、間違いなかった。
――それも、相当のことが。
運び出される患者さんには、一目見て重症と分かる人の姿がある。でもそれこそ火事か何かでなければ、そんな患者さんを運び出そうとはしないはずだ。
あたしは病院全体が見渡せる場所へ移動した。
周囲は報道関係らしき人たちが詰めかけていたり、何台もの警察車両が止まっていたりして、かなり緊迫した雰囲気だ。
けど、煙が出ている気配は――ない。
しかも考えているうちに、警察が入り口に非常線を張って、一般の人が入らないように規制を始めた。
心配になる。
イマドと先輩たち、無事だろうか……?
少し考えて、今度は病院の職員じゃなくて女性の患者さんに訊いてみることにした。
「あの……」
「あれ、あんた迷子かい? どこの病棟にいたの?
――ちょっと、看護士さん看護士さん、この子ちゃんと見てあげておくれよ」
「え、あの、いえ、あたし、そうじゃなくて……」
入院していたのと勘違いされて、慌てて訂正する。
「おや、なんだい。やだね、勘違いしちまったよ。
それじゃ、お見舞いにでも来たのかい? けど、この有様だからねぇ……」
「あの、それなんですけど、いったい何が……?」
火事でもないのにこの騒ぎだから、見当もつかなかった。
「それがさ、あたしもよく分かんないんだよ。
なにしろ急に看護士さんに、『病院が危険だから避難』って言われてね、ともかく荷物だけ持って……」
「ありゃ、俺は爆破予告って聞いたぞ?」
「僕は発砲事件って聞きましたけど……??」
噂が飛び交う。
でも全館避難の指示が出ているところをみると、爆破予告がいちばんありそうだった。
――信じられないけど。
なにしろこのケンディクは、独立の時でさえ激しい戦闘がなかったほど平和な国だ。
海の向こうのロデスティオ大陸は、紛争やテロ事件が絶えないけど、この国でそんな話は――。
そして、気づいた。
「まさか、テロ……?!」