Episode:36
シルファ先輩がフロアの向こう側へ行く様子だったから、あたしは反対側へ回った。
たくさんある棚の中から、古代ローム時代を探す。
でもどれも、図書館にあったような……?
シエラ学院の図書館は、案外歴史関係の本は多い。レポートの課題に出たりして、資料で使う機会が多いからだ。
ただ古代ローム時代はもともとの資料が少ないから、おのず発刊されている本の数も少なかった。
もちろん新刊は時々出るけれど、突拍子もない解釈だったり何かの本をまとめただけだったりして、面白そうな本が出る事はあまりない。
――やっぱり、ファクトリーに頼もうかな?
なにしろうちは歴史だけはあるから、古い時代の資料も多い。だからデータだったら、すぐに送ってもらえるはずだ。
そんなことを考えながらうろうろしているうちに、あたしは一冊の本を見つけた。
タイトルは「神話における竜機の伝承」。
もう10年以上前、旧ワサール領の地方で荒れ果てた神殿?が発見されたことがあったのだけど、そこから貴重な古文書も一緒にみつかった。
この本はその古文書を、解読して編集したものの考察だ。
実は以前から発刊すると言う噂はあったけど、発売直前に延期ということが度重なって、いつ出るのか分からずじまいになっていた。
「よいしょ……」
近くに置いてあった踏み台を引っ張ってきて、上に昇る。
けどあたしの身長じゃ、一番上の棚にあるこの本には、それでもまだ上手く届かなかった。
必死に手を伸ばす。
――届く、かな?
どうにか指先が、背表紙の下側のへりにかかった。
もう一段、背伸びをする。
少しづつ少しづつ引っ張り出して、本がどうにか半分くらい出てきた時。
「――!!」
急に踏み台が傾いて、バランスを崩す。
そのまま後ろへ落ちながら、とっさに受身の体勢を取って――。
「?」
床じゃなくて、何かの上に落ちた。
「えっと……?」
そして気が付く。
「す、すみませんっ!」
誰か男の人を、下敷きにしてしまっていた。
「あのっ、すみません、大丈夫ですか?!」
しかもよく見ると、学院の先輩だった。確か上級傭兵じゃないけれど、シルファ先輩と同じ学年だったはずだ。
「あ、大丈夫。ほら、君、軽いし」
「………」
なんか、ぐさりと来ることを言われた気がする。
けどこの先輩が身体をさすっているのを見て、心配になった。
「あの、本当に……?」
「ああ。
それより……その、ケガはないかい?」
「あ、はい、あたしは大丈夫です」
受身を取っていたし、床に叩きつけられたわけじゃないから、打ち身すらない。
でもその先輩は気になるのか、あたしのことを上から下までずっと見ている。
「あの、あたし、何か……?」
なんとなく不安になって尋ねると、この先輩がかぶりを振った。
「いや、別に――」
何か悪いことを言ったらしい。