Episode:23
「サラマンダー? 珍しいな、中級か?」
「えっと、多分そうだと、思うんですけど……」
あまり聞かないだけに分類も曖昧らしい。
もっともこの分類も、その威力で適当に人が決めただけで、これといった基準もないのだが。
「こっちはこないだの、雷呼ぶヤツだろ?」
イマドは見たことがあるのだろう、薄黄色のクリスタルを指差してそう言った。
「うん、イマドも……いる?」
「いいっていいって」
低位でも精霊は貴重なのに、まるでその辺の石ころのような扱いだ。
「でも、家にいっぱい……余ってるし……」
「――マジかよ」
「なんと言うか……凄いな」
イマドといっしょに私も驚く。
先日のアヴァンでの件から、何か相当の曰くつきだとは思っていたが、想像以上だ。
すぐ使用できる状態の精霊は貴重で、シエラでさえ余りなどないのだ。なのにそれが、「いっぱい」余っているというのだから、常識的なラインを遥かに超えている。
何より、そういうものを大量に備えていること事態が、かなりあり得ない話だ。どこかの組合ならともかく、ふつうの家で持つようなものではない。
「まったく、あなたの家と来た日には。
ですがそれより、早く始めたほうがいいと思いますがね」
「――あ」
タシュアの言葉に、私たちがここへ何をしに来たのか思い出す。
「ルーフェイア、ほら、早くいちばん軽いの持ってこいって」
「……うん」
とことこと、この子が歩き出した。
だが……何か様子がおかしい。
「ルーフェイア、どうかしたのか?」
「いえ、なんでも……」
そう答えながら、この子がふらりとよろける。
「おいっ!」
「ルーフェイアっ!」
とっさにイマドと2人で駆け寄って、両側から支えた。
「どうしたっ、大丈夫か!」
「うん……」
だが表情はどこか虚ろで、かなり消耗しているようだ。
「本当に大丈夫か? 戻って休んだほうが、いいんじゃないのか?」
が、答えがない。
「ルーフェイアっ! しっかりするんだ!」
「……精……霊……」
私たちに支えられたまま、ぼんやりとこの子がつぶやく。
「え?」
「精霊? それがどうしたんだ?」
だがこの子は、答えなかった。