Episode:21
「想像しているのが本当にキエーグかどうか、怪しいものですがね」
タシュアが毒舌を付け加える。
「す、すみません!」
もう条件反射になってしまっているのか、誰も「悪い」と言わないうちから、ルーフェイアが謝りだした。
「何に謝っているのです?」
「いえ、あの……ごめんなさい……」
「誰が謝れと言いました」
次々と返されてこの子がうつむく。
もっとも私に手を引かれているから、立ち止まることはなかった。
「ほら、ルーフェイア、そうやっているとつまずくぞ?」
「あ、すみません……」
「いや、謝らなくてもいいんだが………」
やはりこの子の相手は、イマドが適任らしい。いつものことなのだが、ともかく私とだと会話も続かなかった。
まぁこれは、私が上手く話せないせいもあるのだが……。
「お前がさ、どんな点数出すか楽しみだよな〜」
「イマド、ひどい……」
珍しく言外を感じ取ったようで、ルーフェイアが少し拗ねて抗議している。
――こんな表情をするんだな。
タシュアが相手だとこの子は泣くばかりで、なかなか他の表情は見られない。性格が繊細なのも手伝って、何か言われるとすぐ自分を責めるのだ。
「それ以前にルールをどれほど理解しているか、少々疑問ですが」
「………」
タシュアにからかわれて、ルーフェイアがまたうつむいた。
ともかくきりが無い。
「ほら、ここだから」
これ以上タシュアに言われないうちに、建物のなかへ連れていく。
中は思ったほどの人はいなかった。
「らっき〜、すいてるぜ」
イマドが声をあげる。
もっとも「空いている」といっても、いくらか待っている人はいた。いつもに比べれば、というだけだ。
「待つしかないな」
「まぁ、さほどは待たないでしょう」
自分の言葉に確信があるのだろう。タシュアはさっさと準備を始めた。
私たちもそれに習う。心配したルーフェイアも友達と来たことがあるためか、教えなくても同じようにしている。
「あの調子なら、大丈夫そうだな」
「あの年齢で知らなくては、あまりにも常識外れですよ」
いつものことながら、タシュアの毒舌は途切れることがない。
そうこうしているうちに順番が来たのだろう、係員がこちらへと向かって来た。
「ルーフェイア、ちゃっちゃとボール取ってこいって」
「う、うん」
見ればイマドは、いつのまにかボールを既に手にしていた。ともかく要領のいい子だ。
「どれでも……いいんだよね?」
「その辺に並んでるやつから、テキトーにな」
「わかった」
こっくりとうなずいて、ルーフェイアがボールを取りに向かう。
――大丈夫だろうか?
ただボールを取ってくるだけなのだが、ルーフェイアがするとなると何か心配だ。
だが見ていると、無事この子は棚――重さの違うボールが、幾つも並べてある――へと向かった。それから少し首をかしげて考えて、棚に沿って歩き始める。
そのうちタシュアの隣まで来て、ひょいとひとつ手に取った。