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Episode:19

「なんだ、自分でもわかんねぇのか?」

「――うん」

「では、気のせいだったのでしょう」

 あっさりとタシュアが切り捨てて、おしまいになった。

 ただ例によって、彼は一言付け加える。


「だいいち、この世の中にあなたを気にする人が、そうそういるとも思えませんしね」

「ごめんなさい……」

 また冗談?を間に受けて、この子がうつむいた。


――朝から何度目だろうか?

 普通とは違う意味で、タシュアとルーフェイアは相性が良すぎる。


「ほら、泣いてっと置いてっちまうぞ?」

「や、やだっ!」

 イマドの言葉に驚いたのだろう、この子が泣くのを止めて慌てて走り寄った。


「ば〜か、ウソだって」

「もう!」

 それにしてもイマドも、案外意地が悪いような……。


「ほら、怒るなって。向こう着いたら、めずらしいチョコでも買ってやっから」

「……♪」

 さすが保護者を買って?出るだけあって、対応が見事だ。ルーフェイアが、嬉しそうな表情になる。


「チョコレートひとつで釣られますか」

「………」

 こっちも対応が見事だ。今嬉しそうにしていたこの子が、たちまち悲しそうな表情に変わる。

 それにしても、大人しいなりに表情がくるくると変わるルーフェイアは、見ていて飽きなかった。


「そんなに……悲しそうにするな。

 新しい材料が買えたら、またケーキを作るから」

「シルファまで一緒になって甘やかして、どうしますか」


 例によって忘れずタシュアが突っ込んできたが、私は切り返した。

 まるっきり言われっぱなしというのも、なんとなくつまらない。


「別に、いいじゃないか。それに作れば、タシュアも食べるんだろう?」

「それとこれとは別でしょう」


――やっぱりかなわない。

 なにしろタシュアの毒舌を躱せる人間は、数えても片手で十分こと足りるのだ。

 これ以上何か言うと、それこそ収拾がつかなくなりそうで、結局私は言うのを止めた。


「ルーフェイア、行こう。もうすぐそこだから」

「あ、はい」

 案の定タシュアはもうなにも言わなかった。

 自分に矛先が向けば話は別だが、基本的に彼はあまり他人に興味を示さない。自分は自分、他人は他人という態度がはっきりしている。


――ルーフェイアだけは、別らしいが。

 いじめ易いのがことのほか気に入ったのだろう、この子が寄ってくるとタシュアは、ほぼ必ず相手をしていた。


 しかもルーフェイアのほうも「泣かされる」ではなく「自分が悪いから叱られる」と思い込んでいるから、嫌うことがない。

 まぁそのうちに、気が付くだろうが……。


「そこの角を……左、だよね?」

 ルーフェイアが通りの先を指差した。イマドと行ったことがあるらしい。

 だが店を良く知っているはずのイマドの方が、訝しげな表情になる。


「どうしたの?」

「いや、なんか……休みみてぇだぜ?」

「?」

 まだ店が見えているわけでもないのに、この後輩がそんなことを言い出した。





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