Episode:17
「まったく。自分が食べているものくらい把握しなさい。
それも分からないようでは、いざという時に生き残れませんよ」
「すみません……」
食べている最中にもかかわらず、ルーフェイアがうつむいた。もうひと押しすれば、また泣くだろう。
だが今度はそれより早く、イマドが口を開いた。
「ほら、泣かないで食えよな? 早くしねぇと晩メシの材料買うヒマ、なくなっちまうから」
「う、うん」
涙を飲みこんで、ルーフェイアが慌てて食べ始める。
「買いに、行くのか?」
シルファが尋ねた。
「材料」と聞いて気になったのだろう。
「んと、市場の中央通りの先にある、ちっちゃい店へ行こうかと思って」
「もしかして、セスさんのお店か?」
「あ、それです」
その店にはタシュアも覚えがあった。シルファが言うには、珍しいものを取り揃えているのだとかで、時々買い出しに付き合わされている。
「あの店じゃないと、そろわないモノって多いじゃないですか」
「そうだな。
だが……大丈夫なのか? それなりに値も張るはずだが……」
この2人、どちらもいろいろ作るだけあって、こういうことでは話が弾むようだ。
「叔父さんに小遣いもらったんですよ」
「なるほど。じゃぁ、そこまで一緒に行くか?
――タシュアもいいだろう?」
どうやらシルファも、同じ店へ行くつもりだったらしい。
「別にかまいませんよ」
話が決まって、みなで並んでいる食事を片付けにかかる。
テーブルの向こうでは、ルーフェイアが嬉しそうな顔をしていた。思いがけずこのあともシルファと一緒に行動できることになって、喜んでいるのだろう。
タシュアにもこの少女はよく懐いているが、いじめることのないシルファには、もう一段懐いていた。
「ルーフェイア、その店へ行くのがそれほど嬉しいのでしたら、先にひとりで行ってきてはどうです?」
「え……」
思った通り、今度もルーフェイアが困り果てる。
ことごとく予想通りの反応を示すこの少女は、からかいやすいことこの上なしだ。
「遠慮せずにどうぞ」
「けど……ごはん、残したら……」
真に受けて、どうしていいか分からなくなったらしい。おろおろしながら、隣のイマドをすがるように見ている。
「確かにお前、たいてい最後だもんなぁ。先に行くどころか、最後になりかねねぇし」
「でしたら、後から来ればいいでしょう。私たちは先に行きますから」
ルーフェイアを泣かすのが面白くてしょうがないタシュアだ。容赦がない。
「だがタシュア、この子をひとりで残すのは……」
シルファが横から口を挟んだ。可哀想だ、というのだろう。
「――ルーフェイア、早く食べてしまいなさい。みんな遅くなります」
「は、はい!」
「あ、バカ、せっかくなんだから味わって食え」
イマドとタシュアの2人から正反対のことを言われながら、また慌ててルーフェイアが食事を食べ始める。
「やれやれ。
早くとは言いましたが、喉でも詰まらせるつもりですか?」
「え、あ、ごめんなさい……」
またもやルーフェイアが謝ったが、シルファを困らせるつもりはないタシュアは、それ以上は言わなかった。