Episode:16
「まったく、2人とも何をやっているんですか」
さらに例によって、何もわかっていないルーフェイアが追い討ちをかけた。
「何が、無理なんですか……?」
2人が顔を見合わせる。
「黙っていないで、説明してあげてはどうです?」
「タシュア……」
これほど面白い見世物はない。
「ねぇイマド、どういう意味?」
シルファに訊いても叶わぬと知ると、ルーフェイアは相手を保護者に変えた。
もっとも結果は変わらない。
「ンなこと言われても……あぁもう、そのうちな、そのうち!」
そう簡単には動じないイマドも返答に窮して、必死に言葉を濁している。
「いったい、いつの『そのうち』やら」
「先輩、煽らないでくださいってば!」
「煽った覚えはありませんがね」
もともとがいじめ癖のあるタシュアだ。見つけたネズミを、そう簡単に逃すわけもない。
一方で話題の当事者のルーフェイアは、まだきょとんとしたままだった。
「ねぇ、どうしたの?」
「なんでもねぇって!
――そですよね、先輩!」
「ああ、大したことじゃないんだ」
どうにか言い繕って場を収めようとする2人の慌てぶりは、最良クラスの娯楽と言える。
「何事も、知っておいたほうがいいと思いますが?」
「先輩!」
「タシュアっ!」
が、ここで思惑とは少々違う方向へ事態が転がった。
「あの、えっと、ごめん……!」
自分のせいだとでも勘違いしたのだろう、ルーフェイアがまた謝り始める。
「あなたが謝ってどうするんですか」
「す、すみません!」
こうなると、いつもの堂々巡りだ。
「なんでも謝ればいいとでも思っているなら、大間違いですよ」
「………」
これがとどめになって、見事にルーフェイアが泣き始めた。声をあげるようなことはないが、涙が次々とこぼれ落ちている。
「やれやれ、今度は謝る代わりに泣くわけですか。呆れたものですね」
だがタシュアはそれ以上言わなかった。
ただし可哀想に思ったわけではない。単純に注文していた食事が来ただけのことだ。
とりあえず口を閉じたタシュアに、シルファが隣でそれと分かるほどはっきりと安堵の表情を見せたが、これにも彼は突っ込まなかった。
通常より3ケタほどずれているとは言え、タシュアにも一応加減というものはある。
「ほら、泣いてねぇで食べろって」
「あ、うん……」
向かいでも後輩たちが、運ばれてきた食事に手をつけ始めた。
「あ、これ……おいしい♪」
「だろ?」
とは言えルーフェイアにどこまで味がわかっているかは、かなり謎だ。
「それが何か、わかっているのですか?」
「えっと……お魚ですよね……?」
試しに突っ込んでみると案の定、要領を得ない答えが返ってくる。
なにしろこの少女、華奢で繊細な外見に似合わずなんでも食べる――というか、何を食べさせられても文句を言わない。どうも基準は「毒でないこと」程度のようで、いざとなれば木の根でも「おいしい」と言うのでは、と思うほどだ。
(確かにそのほうが、戦場ではいいのでしょうが……)
ともかく色々な意味で、ルーフェイアは基準がずれている。