表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
至高の日常 ルーフェイア・シリーズ10  作者: こっこ
Chapter:12 そしてまた日常
120/121

Episode:120

 しばらく考えて、あたしは載っていたミルクだけを手にとった。

 それからまた恐る恐る、先輩に話しかける。

「先輩、これ……食べませんか……?」

「いただきます」


 残りもので怒られるかと思ったけど、拍子抜けするくらいあっさり、先輩があたしの食事を持って行った。

 そのまま黙って食べ始める。


――お腹、空いてたのかな?

 先輩はいつもたくさん食べるから、病院の食事じゃ足りなかったのかもしれない。


 どっちにしても嬉しくなって、あたしはミルクに口をつけた。

 ゆっくり……ゆっくり、飲んでいく。

 自分の身体のペースに合わせただけだったけど、かなりゆっくりだったらしい。どうにか飲み終わる頃には、先輩はだいたい食べ終わっていた。


 また、眠くなる。

 空になったカップをサイドテーブルに置いて横になると、目を開けているのも辛かった。

 でも少し、目を開けたまま頑張ってみる。


「ルーフェイア、何をしているのです」

「え、いえ……」

 もともと、あんまり意味は無い。

 それを見透かしたように先輩が言った。


「早く寝なさい。その状態で起きていても、何にもなりませんよ」

「す、すみません!」

 慌てて目を閉じる。

 想像以上に疲れてたのか、すぐにあたしは眠ってしまった。



 次にはっきり起きた時、辺りは明るかった。

 視界にタシュア先輩の姿がを見つけて、なんとなく挨拶する。


「……おはよう、ございます……」

「もう午後です」

「――え?」

 びっくりして時計を見ると、もうお昼はとっくに過ぎていた。


――そんなに、寝ちゃったんだ。

 自分で自分に驚きながら、そっと動いてみる。

 昨日はあんな調子だったけど、普通じゃ考えられないくらい寝ただけあって、だいぶ動けるようになっていた。


 ゆっくり起き上がる。

 先輩は椅子に腰かけ――寝てなくていいんだろうか?――て、本を読んでいた。

 話し掛けたら邪魔をしてしまいそうで、黙って辺りを見回す。

 あ、ここ……。


 今ごろになって、自分がどこにいるのかやっと納得した。

 分かってみればどうということはなくて、あたしがいるのはタシュア先輩が入院?した病室だ。2人部屋で、確か片方ベッドが空いていたから、そこへ入れられたらしい。


 でも、そのほうがよかった。

 個室にひとりっきりとか、大部屋に知らない人といるよりは、このほうがずっといい。

 だけどこうして見ると、テロ事件があったなんて信じられないくらい、病院の中は落ち着いていた。


 あの子たちも、こんなふうに穏やかだといいんだけど……。

 あとで看護士さんに訊こうと思いながら、あたしはまた横になった。昨日が昨日だったから、まだすぐに疲れるみたいだ。


――これじゃ、いつ帰れるんだろう。


 少し心配になる。

 みんなの顔が見たかった。シーモアやナティエスやミル、それにイマドの……。

 と、病室の扉がノックされる。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ