Episode:118
◇Rufeir
ふと、目がさめた。
部屋の明かりが目に刺さる。
見覚えのない部屋。見覚えのないベッド。自分がどこにいるのか、まったくわからない
眠る前に何をしていたのか思い出そうとしたけど、上手くいかなかった。ひどく疲れていて、ぼんやりしてる。
「目が覚めましたか?」
男の人の声が聞こえた。
――誰、だろう?
頭の中に靄がかかったみたいで、はっきりしない。ただなんとなく、起きなきゃいけないと思った。
ちょうど横向きだったから、そのまま手をついて起き上がろうとする。
でも、身体がとても重くて……。
「――きゃぁっ!」
受身を取る暇もなくベッドから落ちて、毛布と一緒に床に叩き付けられた。
「痛っ……」
「まったく、何をやっているのです」
また男の人の声が聞こえて、顔を巡らす。
「タシュア、先輩……?」
けど先輩、どうしてこんなところにいるんだろう。
それに何より、ここはどこなんだろう……。
「ルーフェイア、いつまで床に寝ているつもりですか」
「す、すみません……」
慌てて起き上がろうとする。
「……え?」
何度やっても同じだった。腕に力が入らなくて、身体が起こせない。
「うそ……」
言うことを聞かない身体に戸惑いながら、必死に力を込めた。何度も繰り返して、ようやく両手をついて上半身を起こす。
息がかなり荒くなっていた。
――どうしちゃったんだろう?
しかも、どうやっても立ち上がれない。
ベッドにすがろうとも思ったけど、両手をついてないと身体が支えきれなくて、結局そのままの姿勢で動けなくなってしまった。
「何がしたいのか知りませんが、その調子では夜が明けますよ」
よほど情けなく見えるんだろう。先輩にそんなふうに言われてしまう。
「ごめんなさい……」
「謝るより、立ったほうがいいと思いますがね」
だけどやっぱり動けない。どれほど力を入れてみても、体勢を変えることさえできなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「謝れなどと、誰も言っていませんよ」
「ごめんなさいっ!」
どうしていいか分からなくなる。
ともかくもう一度、慌てながら立ち上がろうとして……。
「きゃっ――」
また、体勢を崩した。しかも今度は毛布まで絡まって、身動きができなくなる。
涙がこぼれた。
ベッドの上には呼び鈴のボタンがあるのに、それにさえ手が届かない。
あたし、いったい……。
「――やれやれ」
声がして、抱き上げられた。
「先輩……?」
毛布と一緒にベッドの上へ降ろされる。