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至高の日常 ルーフェイア・シリーズ10  作者: こっこ
Chapter:12 そしてまた日常
117/121

Episode:117

 午後までにルーフェイアは、目を覚まさなかった。あの精霊が言ったとおり、そうとう身体に負担がかかったらしい。

 学院からは予定通り午後に、シルファやイマドと一緒にムアカが出向いてきたが、容態を確かめただけで戻る羽目になっていた。


 そしてタシュアは、結局今夜もここへ泊まりだ。

 どこが悪いわけでもないので、いいかげん帰っていいはずなのだが、シルファが承知しなかった。加えて例の主任までシルファに同調してしまい、そのまま退院できずだ。

 とは言え入院した時と違い、シルファがここへ何冊も本を持ってきてくれている。また食料も自由に売店へ行って調達できるため、不自由せずに済んでいた。


 ルーフェイアのほうは相変わらず、ほとんど姿勢も変えずに眠っている。

 胎児のような姿勢だった。

 何かを恐れるかのように、自分の身を守るかのように、手足を縮め身体を丸めて……。


(何をそれほど、恐れるのでしょうかね)

 こういう形での恐れと言う感覚は、タシュアは持ち合わせていない。脅威が来たなら、目を覚まして退ければ済むだけ、そう思っている。


――もっとも今のルーフェイアには、それも出来ないだろうが。


 なにしろ看護士が時々診回りにきても、全く目を覚まさないのだ。本来彼女はは気配に敏感なことを考えると、やはり相当のダメージを受けたようだった。

 もっとも、どこかが損傷したと言うわけではないらしい。事情を知った上でルーフェイアを診ているムアカの言葉は、「寝てれば治るわ」だった。


 かの精霊とやらもあっさり引っ込んだままで、出てくる様子はない。

(面白かったのですがね……)

 イマドに遮られてしまったが、もう少しいろいろ聞いてみたかったと言うのが本音だ。


 なにしろ人外の存在の意見と言うのは、なかなか聞く機会がない。しかも精霊というのは人間と異なるだけに、予想もしなかったような反応を示す。

 ある意味では、人と話しているよりもよほど面白かった。


――それにしても。


 グレイスとは何なのか、何故あれほどの精霊がグレイスなる者と共生関係にあるのか……。

 眠り続ける少女を見ながら、また思いを巡らす。

 放たれた制御不能の呪石を、簡単に御する力。

 だがなぜかその精霊は、グレイスの支配を受けている。


(……なぜそうなるのやら)

 精霊は通常、なんらかの形で従えるのが普通だ。方法はともかく、屈服させて初めて、力が利用できるようになる。


 だがルーフェイアの場合は、物心ついたときには既に、あの精霊と共生関係にあったらしい。

 かといってまさかそのくらいで、あれほどの精霊を屈服させるなど不可能だろう。


(結局、『グレイス』ですか)

 その名を持つこと自体に何かあるとしか、考えようがなかった。

 ルーフェイア=グレイス=シュマー。

 華奢で儚げで泣き虫で、だが群を抜いた魔力と戦闘力とを持つ、アンバランスで脆い少女。

 その時、不意に少女が目を開けた。





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