Episode:113
◇Loa
あ、派手に始めたなぁ……。
野次馬よろしく病院のほうを眺めてたあたしの耳に、爆発音が届いた。
けどまぁ、こゆ時の突入は派手にやるのがセオリーだから、当然と言えば当然。むしろ閃光弾が使えない分、大人しい部類にはいるかもしれない。
ちなみに今回、ボクの出番は派手さに欠けた。ルーフェが潜入したあと、上級傭兵とシュマー間の連絡役をしてただけだ。
――ま、いいんだけど。
言われたことはちゃんとこなしてるんだから、これで落ちたら採点システムがおかしい。
でもそんなことより、あの子のほうが心配だった。
「ルーフェ、どしたかな?」
「心配ありません、グレイス様ですから」
執事だかなんだかみたいなおじさんが、きっぱり断言する。
「でもさ、世の中万が一ってことも……」
「グレイス様に、それはあり得ませんので」
やけに自信たっぷりだ。
まぁ確かにあの子のことだから、そう簡単にはかすり傷も追わないだろうけど……。
だけど世の中ってば、何があるか分からない。
ただ突入なんて、始まっちゃえば短時間で終わる。と言うか、それ以上かけてるようじゃ話しにもならない。
そんなことを思いながら突入の行く末をしばらく見物してた時、突然光が閃いた。
「なに、あれ……?」
閃いたなんてもんじゃない。
なんの前触れもなしに上空に現れた光球が、辺りを真昼のように照らしだした。
くっきりと地面に影が落ちる。
「私は初めてですね、ああいうものを目にするのは」
「普通そうだと思うけど」
正体を見極めようと、手を翳しながら仰ぎ見る。
――え?
目を細めながら見たのは、ちょっとやそっとじゃ信じられないモノだった。
だってどう見てもあの空にいるの――人だ。
「人、のようですが」
おじさんが冷静に指摘する。
「ですけど、あれは人じゃありませんわ……」
連絡役のシュマーのお姉ちゃんが、呆然とつぶやいた。
「んじゃ何? 人のカッコした人外?」
「それは……」
お姉ちゃんが口篭もる。
だけどゆっくり降りてくる「それ」は、何度見ても人で……。
「シルファ先輩かな?」
確か先輩去年の海竜騒ぎで、こんな技を披露?してくれてたはずだ。
でもまだ、何かが腑に落ちない。
そこへ、恐ろしい言葉が放たれた。
「恐らく、グレイス様かと」
「えっ――?!」
けど、けど、人があんなになっちゃったら……。
背筋が寒くなる。
でもこの場所からは――本当は何が起こっているのか、知りようもなかった。