Episode:111
◇Imad
それまで静まり返ってたフロアに、いきなり爆発音が響いた。
部屋を飛び出す。
シルファ先輩が手近な野郎に蹴りを叩きこんでるのが、目に入った。
「あ、すげぇ」
思わず言葉が出る。
ズボンならともかく、豪快に切り裂いたあの制服で蹴り入れてんだから、どうなったかは推して知るべしってやつだ。
しかも当の先輩、まるっきり分かっちゃいねぇし。
連中がやたら嬉しそうだってのに、一瞬怪訝そうな顔をしただけで、あとは普通どおり動いてる。
ただ腹立つことに、いちばんいいポジションにいたのは犯人連中のひとりだった。
――ってあいつ、ここがどこだか忘れてやがるし。
今の蹴りをいちばんいい場所で見物?してたせいで、このヤロー思いっきり隙だらけだ。
俺はさっさと近寄って、背中から切り倒してやった。当然致命傷だ。
っつーか、これで倒せねぇようじゃ学院生辞めるっきゃない。
その間にシルファ先輩も、蹴りいれたヤツに短剣突きたててあっさり1人倒す。
次いで間髪入れず、残るヤローへ先輩が動いた。
さすがに、さっきの「いい場面」から立ち直ったんだろう。そいつがまともな表情になった。
とっさにフォローで魔法を唱えようとする。
けど、いいものを見つけて止めた。俺にとっちゃこのほうが早えぇし、確実だし、なにせ簡単だ。
「先輩、そのまま前っ!」
俺の声(違ったか?)に、先輩がそのまま突っ込む。
ヤローのほうは真っ直ぐ来るとは思ってなかったせいで、馬鹿みたいに口開けて動きが止まる。
「一生止まってろっての」
――行け。
相手の懐で、小さいけど炎がはぜた。
思いもしなかった暴発に、ヤローが銃を取り落とす。こうなっちまえばもう、撃とうったって撃てない。
先輩のほうはそのまま真っ直ぐ懐へ飛び込んで、真横に短剣を振るった。
「お見事♪」
綺麗に咽喉をかっさばかれて、悲鳴より早く血しぶきが上がる。
「これで、全部か?」
先輩が何気ない言葉に、俺は答えた。
「いえ、もひとり奥の部屋に」
リーダーのヤローが潜んでるのが、おもいっきり丸見えだ。
「――今、燻り出しますんで」
魔法にしようかとも思ったけど、結局さっきと同類のやり口で行く。
絶叫が上がった。
「イマドっ!」
テロリストが火だるまで出てきた光景に、さすがにシルファ先輩が鋭い声を出す。
「下手に部屋に突っ込むより、いいですって」
これでケガでもした日にゃ、目もあてらんねぇだろうし。
「だいいちこいつ今まで、何度もこうやって女子供まで殺してますからね。少しは同じ目に遭わせてやんねぇと」
っつーか、これでもこのヤロー、まだお釣りが来るはずだ。
「そうなのか……」
幸いシルファ先輩も納得する。
それから、俺の長剣のほうへ手を出してきた。