表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/121

Episode:108

「下手に部屋に突っ込むより、いいですって。

 だいいちこいつ今まで、何度もこうやって女子供まで殺してますからね。少しは同じ目に遭わせてやんねぇと」

「そうなのか……」

 平然と言い放たれて、シルファが納得?してしまった。


(ですが、危ないですねぇ)

 院内は基本的に、火気厳禁のはずだ。

 尚もどうするのかと見ていると、シルファがイマドから長剣を受け取った。


「――借りるぞ」

 早いうちにとどめを刺そうというのだろう。以前の教訓を、きちんと彼女は覚えている。

 刃が振り上げられた。


(――?!)

 瞬間、何か嫌なものを感じる。

 懐へと動いたテロリストの手の内に――。


「シルファっ!」

「やべぇっ!」

「いけない、その石――!!」


 タシュアと後輩2人の声が上がり、ほぼ同時に長剣が振り下ろされた。

 だが、遅い。

 男の手からこぼれ落ちた石が、淡緑色の光を放ち始める。


「早くここから離れなさい、呪石です!」

「なにっ?!」

 呪石は要するに、呪文そのものを込めた魔力石だ。作るのは難しいが、放つと周囲の魔力を取り込んで呪文を発動させるため、威力の桁が違う。

 シルファたちもすぐに事態を把握し、動いた。


「ルス・バレーっ!」

「エターナル・ブレスっ!」

 手早く二人が呪文を唱え、防御体制を整える。


 その間にイマドが前へ出、魔法を放つかのように手を突き出した。

(これは……?)

 それまで明るさを増す一方だった石からの光が、不安定に明滅している。


「早く、今のうち……!」

 力技をかけながらやっと言った、という後輩の様子に、タシュアは状況を悟った。

 稀に呪文詠唱という媒介なしで、直接魔力を扱える人間がいる。イマドもそのひとりなのだろう。


――食い止められるとは思えないが。


 一度解き放たれた呪文は、そう簡単に押さえこめはしない。

 だがこのおかげで、発動までの時間が引き延ばされていた。

 即座に手もちの暗黒魔法を唱える。


「無念の声が響く闇の底にて、其は黄泉の回廊を迷わん。開け、黒き審判の門――」

 空間に亀裂を作り、対象を異次元へと飛ばす魔法だ。これで石自体をこの世界から放り出してしまえば、たとえ呪石でも被害はない。


 が、上手く空間が切り裂けなかった。

 発動寸前の呪石のエネルギーが、邪魔をしているらしい。


(――させるものですか)

 再度唱えなおす。

 テロリストの放った石ごときに屈するなど、タシュアのプライドが許さなかった。

 ほんの一呼吸にも満たない間に、もう一度石を捉え――。


「ダメだっ、もうもたねぇっ!!」

 それまでどうにか押さえこんでいたイマドが、悲鳴をあげた。

 にわかに淡緑色の光が強くなる。


(間に合いますか――?)

 その時、不意にルーフェイアが動いた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ