Episode:104
「これでよし、っと」
もう2枚ほど撮って気が済んだのか、イマドが写影機をバッグにしまった。
「あとで先輩にも、ちゃんと渡しますから」
「いや、いい……」
撮られるだけでもイヤなのに、持つなど考えたくもない。
「そです?
っと、、あと少しで時間ですね」
「――そうだな」
彼の言葉どおり、時計の針はもう、まもなくといったところを差していた。
「準備は、いいのか?」
「だいじょぶです」
私ももう一度、タシュアの短剣を手にとって確かめる。
――いける。
揺るぎない自信が、自分のうちにある。
「予定通り、私が先に行く。後から来て、フォローしてくれ」
「了解」
時を待つ。
時計の針が、一秒づつ時を刻んだ。
残り時間がほとんど無くなる。
「行くぞ」
短剣をタオルで隠して持ち、立ち上がった。
イマドも死角になる壁際に張り付き、今まで隠していた持参の長剣――旅行バッグに巧妙に隠してあった――を、鞘から抜く。
私がまず部屋から出て、ナースステーションの前まで行った。
まっすぐ中まで入って、犯人たちのほうへ行く。
「なんだお前、ここはダメだと言ったろう」
「用があるんだ」
言って構わず近づく。
「止まれ! 死にたいのか!」
銃口が向けられるが、私はさらに一歩出た。
予期しなかった異変に、その辺に座っていた犯人たちも、立ち上がってこっちへ来る。
「そこの控え室へ行け!」
「用があると言っただろう」
取り合おうとしない私に、犯人たちが浮き足立つ。
「言うことをきかないと――!」
男の言葉の最後が、爆発音にかき消された。外で待機していた上級傭兵が、非常口を爆破したのだろう。
それと同時に、幾つものガラスが割れる音もフロアに響く。
「な、なんだ?」
犯人たちがうろたえて、どこから音が聞こえたのかと首を巡らした。
大きな隙が出来る。
瞬間私は動いた。
一気に手近な相手の間合いに踏み込みながら、腹部の急所へ蹴りを叩きこむ。
「――?!」
「――!!」
別の男たちが、何故か嬉しそう?な表情で私を見ているのに気づいたが、考える暇はなかった。