ふたごの子どもと公園の大きな木
小学2年生のしょうたくんとあおいちゃんは、同じ家でくらすふたごの子どもです。
いつも元気でうんどうが大すきな男の子のしょうたくん、べんきょうができてしっかりものの女の子のあおいちゃん。けんかをすることがあっても、2人はすぐになかなおりします。
今日はしゅうぎょうしきで、いよいよ明日からは冬休みになります。
いつもよりも早く学校から帰ってしゅくだいをすませると、近くの公園へいっしょにあそびに出かけようとげんかんから出ようとします。
「ママ! 公園へあそびに行くからね!」
「外はさむいから、早く帰らないといけないよ」
「は~い!」
しょうたくんは、きょうりゅうのイラストが目立つ青いふくの上に赤色のジャンバーをきています。あおいちゃんのほうは、かわいいうさぎさんのイラストがえがかれたピンク色のふくの上にピンク色のジャンバーです。
そんな2人ですが、冬であってもずっと半ズボンですごしています。車に気をつけながら歩いていると、目の前に『あおぞら公園』が見えてきました。
しょうたくんとあおいちゃんは、公園へ入るとすぐにブランコにのってあそび始めました。2人が公園にきてさいしょにあそぶのは、いつもこのブランコです。
しばらくあそんでいると、あおいちゃんがしょうたくんに声をかけてきました。
「後ろにおちばがいっぱいあるから、いっしょにあつめよう!」
「え~っ! もっとブランコであそびたい!」
「そんなこと言わないの! おちばあつめ、本当に楽しいから!」
あおいちゃんがブランコの後ろにある大きな木のそばへくると、しょうたくんもブランコをおりてあおいちゃんのいるところへ走って行きました。
「こっちを見て! もうこんなにあつめたよ!」
「ぼくだって、これくらいあつめることができるぞ!」
しょうたくんは、あおいちゃんが赤茶色にそまったおちばをりょう手いっぱいにもっているのがくやしそうです。あおいちゃんにまけたくないと、しょうたくんはじめんにおちているはっぱをあつめようといっしょうけんめいです。
「おちば、いっぱいあつめた?」
「ぼくも、おちばをこんなにあつめたよ!」
「それじゃあいくよ! 1、2の3!」
2人は、自分たちであつめたおちばを空高くなげました。空にうかんだおちばは、ヒラヒラと地面におちていきます。
「わあっ! すごいなあ」
「もう1回やろうよ!」
しょうたくんとあおいちゃんは、ふたたびおちばをあつめては空高くなげています。すると、後ろからだれかのこえが2人の耳に入ってきました。
「あれっ? だれもいないぞ」
「でも、さっきの声は後ろから聞こえたよ」
公園にいるのは、しょうたくんとあおいちゃんのほかにはいません。2人がとまどっていると、目の前にある大きな木から声が聞こえてきました。
「うわっ! 大きな木がしゃべった!」
子どもたちがびっくりする中、大きな木はおじいちゃんのようなやさしい声で2人に語りかけてきました。
「はっはっは! 子どもたちよ、おどろかせてすまなかったなあ」
大きな木のやさしい語り口に、しょうたくんとあおいちゃんはじっと耳をかたむけています。
「わしは、このまわりで元気にあそぶ子どもたちをここから見まもっているのじゃ」
「いつもここで見ているの?」
「ああ、そうじゃ。しょうたくんもあおいちゃんも、わしはよく知っているぞ」
春から夏、そして秋から冬へときせつがかわっても、公園にそびえる大きな木は子どもたちの元気な声を聞くのが大すきです。2人の子どもは、大きな木を見つめながら何かを言おうとしています。
「いよいよ、明日はクリスマスだね。どんなプレゼントがほしいかな?」
「ぼくは、車がロボットにへんしんするおもちゃがほしい!」
「わたしは、大きなくまちゃんのぬいぐるみがいいなあ」
しょうたくんとあおいちゃんは、自分たちがほしいおもちゃをそれぞれ口にしました。そんな2人に、大きな木はやさしく声をかけてきました。
「そうかそうか、それは楽しみだなあ」
大きな木は、自分のことばに子どもたちにさらに語りかけています。
「サンタさんがクリスマスプレゼントをもってくるのは、いつもいい子にしているところだぞ」
「ぼくは、いつもいい子にしているもん!」
「わたしもいい子にしているから」
「プレゼントがとどくのを楽しみにするためにも、しょうたくんもあおいちゃんも早くねないといけないぞ。やくそくできるかな?」
2人の子どもは、大きな木が口にしたやくそくのことばを聞いてすぐにへんじをかえしました。
「うん! ちゃんとやくそくするよ!」
「わたしも!」
大きな木は、公園から出て家へ帰る子どもたちのすがたをやさしく見つめています。
その夜、子どもたちのへやにあるベッドにはしょうたくんとあおいちゃんがぐっすりとねむっています。そのようすをまどの外からながめているのは、プレゼントをもってきたサンタさんです。
「ここの子どもたちも、きちんとやくそくをまもってぐっすりとねむっているぞ。いい子にしているから、ベッドのそばにプレゼントをおくとするかな」
つぎの日、おきたばかりのしょうたくんとあおいちゃんはベッドのそばにあるプレゼントのはこをあけました。そこには、2人ともほしかったおもちゃが入っていました。
「わあっ! 車がへんしんするロボットだ!」
「くまちゃんのぬいぐるみ、かわいいなあ」
2人の子どもたちは、サンタさんがもってきたクリスマスプレゼントを手にしながら大よろこびです。
「サンタさん、ありがとう!」
しょうたくんとあおいちゃんは、おもちゃをもってプレゼントをパパやママに見せようとはりきっています。
あおぞら公園にそびえ立つ大きな木は、つめたい風がふく中で子どもたちのことを思いおこしながら語り出しました。
「しょうたくんも、あおいちゃんも、わしの言ったやくそくをまもってくれたそうじゃ。クリスマスプレゼントがとどいて、子どもたちのよろこぶ顔を思いうかべるのがわしのいちばんの楽しみじゃ」
サンタさんの正体がだれなのかは、大きな木もまだ分かりません。けれども、1本の大きな木と子どもたちの思いがサンタさんにつたわったのはまちがいないようです。