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続 真の天国とは魔王城のことか

作者: 時見草 明日

簡単な前作のあらすじ____

勇者になんかなりたくなかった勇者ちゃん

王子イジメひどい、もうほんときらい

王子マシになったら今度は姫にイジメられたつらい、しんどい、心が

父親(前騎士団長)のしごきまじつらい

魔王に攫われた、でも殺される心配ないし好きなことして過ごせるし魔王城まじ天国


「いや君捕虜なんだけど、なにそんな悠々と暮らしてるんだよ」 by 魔王さん


そして動き出す(諸事情により勇者の力を預かってる設定の)愛の歪んだ王子____!


__うわ……王子の(勇者ちゃんからの)好感度低すぎ……!?




今回のお話はそんな魔王城(敵地)が天国に感じる勇者ちゃんことアイリ・フィフニールに困惑を隠せない魔王さんサイドのおはなし。




「はぁ〜、美味しい。あ、おかわりください。……Bさんのご飯毎日美味しくてついつい食べ過ぎちゃう……」


もっきゅもっきゅ頬袋を膨らませながらつやつやした顔でお代わりを要求されるんですけど、毎回「こんな美味しいもの食べたことない!」って位に嬉しそうに全部食べてくれるからついつい作ってあげちゃうんですよね…… (by魔王城の食堂にて働くコックのB氏)



「とっても面白かったです!Mさんがオススメしてくれた本はハズレがありませんね!えっ、これ読んでもいいんですか!ありがとうございます〜」


キラキラした顔で「オススメの本はありますか?」って聞かれたからテキトーに答えたら律儀にそれ借りて読んで感想まで言ってきて……なんか、罪悪感わいて……毎回丁寧に感想とお礼言ってくるんですよね……他の奴らも見習えばいいのに……(by 魔王城の図書室にて働く司書のM氏)



「すぴー……すぴー……くしゅん!」


あどけない顔で幸せそうに寝てたので、風邪ひくといけないからふわふわの綿布団をかけてあげました、彼女いい子ですよね「手伝うこととかあります?」って言って手伝いもしてくれますし(by 魔王城にて宰相をしているR氏)




「お前ら絆されすぎだろ!!?ていうかランドルフ!?おま、お前、俺にそんな(優しく気を遣った)対応してくれたことあったか!!?」


“魔王主催 勇者アイリ・フィフニールについてどう思う?”アンケートを机に叩きつけた魔王 サタルガナスは激昂した。

捕虜に対する対応じゃないだろ魔族ども(部下)!!

その思いを一番向けたい相手、キッと睨みつけて指を思い切り向けるのはアンケートを回収してもってきた腹心、宰相 ランドルフ(R氏)


「恐れ多くも魔王様、貴方は上司、彼女は捕虜、同じ対応をする方が間違いでは」

「俺そんな優しく対応されたことないぞ!!?たとえ非番でも寝てたらお前『なに私が働いてるのに貴方だけ寝てるんですかふざけやがれでございます』って叩き起こしてたよな!!?寧ろ同じ対応してほしいくらいだわ!!俺にも優しくしろ!」

「すいません、何をおっしゃっているのかわかりません」


いけしゃあしゃあと無表情のままそう告げるランドルフ、こんにゃろう俺上司だよ?魔王だよ?なんてサタルガナスが思おうとこの冷酷ドS宰相は全く気にかけない。

つらい、1番の腹心のその性格の悪さと温度ゼロの対応がつらい、俺にも優しくしてくれてもいいんじゃないかな?


「ところで魔王様、何故このようなアンケートを?」

「………決まってるだろう!」


一息、そこで一度言葉を区切ったサタルガナスはカッと目を見開いた。



「勇者に対する扱いが捕虜のものじゃなくなってるからだよ!!!」



____サタルガナスは語る、気のせいだと思っていたと、ぶっちゃけ気のせいと思っておきたかったと


知ったのは食堂でもりもり飯食っておかわり要求してその後逃げることもせず牢に戻るアイリを見た時だった。


いやいや何脱獄してるのに牢に戻してないんだよ、とか、おかわり要求されて律儀にあげるなよ、とか、まず第1脱獄したのになに牢に戻ってんだよ勇者、とか、色々思うことはあった。


サタルガナスは反省した、勇者を攫って牢に入れて満足してその後の様子を確認しなかったことを、いくら勝利の剣(エクスカリバー)を奪って魔法で暴れないようにと魔封じの呪いをかけていたとしてもその力の全てが抑えられるわけではない。

今は何故か、そう、何故か!大人しくしているがいつ行動を起こすかわからない、と。


サタルガナスはアイリを観察した、そこストーカーとか言わない、これは仕事だからと心で何度も呟きながら観察した。

そしてサタルガナスは自分の理解の範疇を超え、頭を抱えた。


何故って?何故ってそりゃ、アイリは逃げる気もないし魔族に危害を加える気も一切ない様子だったからだ。

どこで手に入れたのか牢の鍵をあけて脱獄したかと思えば、料理美味しい!と満面の笑みでおかわりをコックに頼み、司書がおススメしてくれた本を読めば感想とお礼を律儀に毎回言い、何か手伝えることはありますか?と忙しそうな魔族に問いてこれをしてくれあれをしてくれと頼まれれば丁寧に迅速に仕事を終わらせる。


いやほんと勇者なにしてんの?前半は置いておいて後半とか、俺たち魔族がなにしてるか知ってる?人間界への侵攻だよ?お前の職種なに?勇者だよね、魔族倒す勇者だよね?


そしてサタルガナスは更に知った、魔族(部下)勇者に絆されてんじゃねーか!、と


気のせいと思いたかったが再確認の意味も兼ねたアンケートにて、まさかのあの氷の宰相(冷酷無慈悲なドS野郎)と呼ばれているランドルフすらも絆されていた事に驚きが隠せない。


「まぁ、簡単に言えば優しくて良い子ですからね、彼女。最初は魔族側は警戒してましたし、勇者ですからね、何かあれば死なない程度に痛めつける気満々でしたよ。死ねば新しい勇者が生まれますから、そこにだけは気をつけろとは言いましたが」


勇者、光のモノ、魔王を倒せる唯一、人間にとっては救世主、魔族からすれば厄介な敵、終ぞ、死ぬまで、人間の為だけに、世界の平和の為だけに、自分以外の誰かの為だけに生きることに縛られた哀れな人間。

世界の為に、平和の為に、みんなのために、ただその力が発現してしまったが為に、それ以外の道を歩めない、憐れな人身御供。


「痛めつけようとしていた者、苦しませようとしてた者、関わる気がなかった者、興味のなかった者……お前も興味なかっただろ、その生死以外」

「そうですねぇ、他は知りませんが、私が彼女に興味を持ったのはたった一つ、夜に牢の中で『王子なんか痛い目みちまえばーか!私1人になんでも背負わせすぎなんだよーー!ふつーむりでしょ!一人でとか!まじないわ!つーか王子(あのやろー)地味に嫌な呪いとか受ければ良いんだよ足の小指タンスにぶつけろきらーーーい!!』と叫んでいたのをみまして」

「……はぁ?」

「『魔王城の方が福利厚生とかあるじゃん!管理行き届いてるし!敵地の方が好きにできるとかなに!?』……と。えぇ彼女、ほんといい子ですよね。私が管理した魔族のシステムをとても褒めてくれました」

「お前ってそういうやつだよな」


えぇ、えぇ、感慨深そうに頷くランドルフ。

現在の魔族の労基、ひいては労働環境福利厚生そのシステムは彼の考案によりほとんどが構成されている。


「まぁ文句も言わず手伝ってくれたりしますし、その手際も良い上に仕事が早い、彼女部下にいたら重宝しますね。正直ヘッドハンティングしたいくらいです。他の魔族も、子供みたいに素直な感想を言って懐いている彼女を無下にできない、といった感じでしょう」

「……なるほど」

「あと彼女どっちかっていうと人間……といいますか、王族やそれに連なる貴族や騎士、特に王国の王子の事が大嫌いみたいで……話弾みました。彼女ほんと苦労してますね、その話を側から聞いていた魔族が涙してました」

「なに仲良くなってんだよ!!?つーかそれじゃね!?魔族が絆された原因!」


無表情で淡々と告げるランドルフにサタルガナスはため息を吐いた。


「……で?その話ってどんななんだよ」

「流石に女性(友人)の過去をぺらぺらと話すわけには……」

「俺魔王なんだけどな!?彼奴、捕虜の勇者なんだけどな!!?つーかおま、今完全に友人っつったよな!?」


最近宰相が以前にも増して対応冷たい上に捕虜(勇者/曰く宰相の友人)に対しての方が宰相の態度が柔らかい問題

つらい、とてもつらい、この状況を魔界的諺では魔王の目にも涙と言う。

要約:どんなに恐ろしい魔王であっても時には涙を流す、という意味。(注意:人間界の諺、鬼の目にも涙とは似ているが若干意味が異なる)





サタルガナスはアイリの元へ訪れた。

勇者誘拐事件の一件以来こうやって面と向かって対面したのはこれが初である。


「勇者 アイリ・フィフニール……俺の名は」

「あ、魔王さんだ。何か用ですか?」

「…魔王、サタルガナス…………名乗りぐらいさせろ!」

「え、なんかすいません…えっと、あ、これ食べます?最近宰相さんに貰ったお菓子なんですけど、なんか流行りのらしいです」

「……あの野郎まじで俺にはそんなやさしくしたことねぇだろがぁぁぁぁ!!!」


サタルガナスは崩折れた、若干涙目だった。


ランドルフ、お前勇者に対しては優しすぎないか?お前氷の宰相とか言われて部下にも恐れられてる奴がなに流行りのお菓子あげてんの?……つーかそのお菓子流行りっちゃ流行りだけど、そこそか良い値するしめっちゃ並ぶとか言われてる店じゃん、お前並んだの?それとも部下パシらせたの?(正解:金はちゃんと出したがそれ(行列)に関しては部下に並ばせた(パシらせた)

俺がこれ食べたいなって零したら1人で行けとか言ってたよなお前、私用で部下を使ったりもしないでくださいねとか言ってたよな、俺にももうちょっと優しさってものをだな……


サタルガナスはなんかもう色々とつらかった、1番の腹心のはずのランドルフの対応に色んな意味で。


「え、あの、大丈夫?あの、どうぞ、つらいときは甘いもの食べると気が落ち着くよ」


サタルガナスは思った、嗚呼此奴良い子だ……

ちょろい魔王とはこれいかに。


牢の柵を挟んでお菓子を食べながら2人は話した、例えばアイリの生い立ちだとか王子からの嫌がらせの様々を、例えばサタルガナスに対する宰相の態度とか魔王の席の重みなどの様々を。


「それで、あの親父ナイフ一本だけ持たせて碌に戦えもしない私を森に放置しやがったんだよ!母さんのおかげで次の日には出れたけど!!」

「お前も苦労してたんだな……前騎士団長は俺も遠目で見た事はあるけどそりゃねーわ」

「いやいや、魔王さんこそ凄いよ、魔王さんの場合は力と知恵両方いるでしょ?」

「あぁ、しかも父上が魔族の中の魔族とか言われるくらいのお人でな、息子だからって才能全部受け継いでるわけないし、父上は一を知って十を理解するみたいな人だけど俺は十を知らなきゃ十が理解できないからさ、その重圧がしんどい……」

「わかる、親子だからって同じことができるわけじゃないってわかって欲しい。親ができたことをその子供だからって絶対できるわけじゃないんだからさぁ……」


2人は環境は全く違ったがある意味生い立ちが似ていたのだ。

片方は前期師団長の娘として女の子らしいこともさせてもらえずほぼ無理やりに近い形で鍛えられ、片方は魔族の中の魔族とまで言われた魔王の息子としての重圧の中鍛えられた。

それ故か父親に対する愚痴やらが出てくる出てくる、共感できまくって寧ろ困る。


「でも、お前の方が大変だったよなぁ。俺は魔王になる事は決まったけどお前はそうじゃなかったんだろ?」

「うん、勇者の証は出てなかったからね。はぁ……あの王子にはいじめられまくるし、ある意味勇者になってよかったのかなぁ」


「お前も大変だったんだな……(こんな話聞いたらそりゃ魔族(部下)が泣いたわけだ)……なんか、ごめんな、勇者だからって牢にブチ込んだりして」

「いやいや、私こそ勇者として魔族を倒したりしてたもん、私の方こそほんとにごめんね。それに王だからあの王子と一緒で性格悪いでしょとか思っててごめん、魔王さんほんといい人だったわ……」

「いやいやいや、俺たちだって人間界に侵攻してるわけだからな……あ、あと俺の事はサタンかルーガスでいい」

「じゃあサタンで、私のこともアイリでいいよ」


____さて、この状況を魔界的ことわざでいうと、“ゾンビとりがゾンビになった”という

要約:説得をしようとした人が逆に説得されてしまったこと、もしくはそれに似た状況を意味する



かくしてサタルガナスはアイリに絆され、アイリはサタルガナスと仲良くなった。



そんな和気藹々と和んでいる魔族と勇者(彼ら)は知らない、歪んだ愛情持ちの勇者(仮)設定の王子とそのパーティ[3名]が魔王城に向かって着々と歩みを進めていることを。

そしてその王子も、歪みまくった初恋から起こした拗れた言動からアイリの中の好感度ランキングをぶっちぎって最下位である事など知るよしもない。








[いべんと はっせい]

▼いろいろ と こころ が つらい まおう が あらわれた


▽どうする?

→たたかう

→まほう

→どうぐ ◁

→にげる [場所:牢 選択不可]

→はなしをする


【“さいしょう から もらった おかし” を さしだした】

▼まおう の ゆうしゃ への こうかんど あっぷ


▽どうする?

→たたかう

→まほう

→どうぐ

→にげる [場所:牢 選択不可]

→はなしをする ◁


【かいしん の いちげき! いろいろ と たちば が にている くろうにん の まおう と ゆうしゃ の はなし が はずんだ】

▼まおう と ゆうしゃ の たがい の こうかんど あっぷ



▼まおう は ゆうしゃ に ほだされた

▼ゆうしゃ は まおう に ほだされた


▼ふたり の しんみつど が あっぷ した

▼ふたり は “ ゆうじん ” に なった!




▲ここ で ぼうけんのしょ を きろく します






△loading……



?[しゅうらいいべんと はっせい]?

▼ゆうしゃ(かり)のおうじ と そのいちみ が あらわれた


▽どうする?

→たたかう

→どうぐ

→まほう

→にげる

→はなしをする [好感度:最低ランク 選択不可]



→しおをなげつける ◁





筆がのって続編を書かせていただきました。

魔王さんはこれからも勇者ちゃんに振り回されるでしょう、作者は宰相さんが個人的に好きです。

勇者と魔王が仲良くなる、これいかに。

それでは、おそまつさまでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 続編ありがとうございます! [一言] 『魔王と勇者は解り合ったのであった』(笑) この二人が仲良くなった理由が、勇者ちゃんに拒絶された傷心のバカ王子から謁見の間に集った諸国の外交官や国の…
[良い点] 勇者ちゃんと魔王さんが不憫同士通じ合いすぎてて最高でした。 氷の宰相殿もいいキャラしてます。 [一言] 王子襲来イベントがあったら、魔王さんも一緒に塩撒いてくれそうですね。 宰相殿は塩マシ…
[良い点] ニヤニヤしながら読めました。読後なんかほっこりした気持ちになっております。 復讐・ざまぁ系のR15な話になってもおかしくない状況なのに闇堕ちせずに、敵を絆させる魅力を維持し続ける勇者ちゃん…
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