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第4話 過去

おれはいつも、気がつけば季咲と一緒にいた。両親不在で退屈なおれの元にいつも季咲は訪れた。一緒にご飯を食べ、時には一緒に寝たりとこれまでの十年間、いつも一緒にいた。学校では友達と喋らずに一人で静かに過ごす日々をいつか、退屈だと感じていた。理由は明確だった。恐らく小学三年生のあの日から、おれは季咲のことが好きだったんだ。


事の始まりは小学三年生の夏休み。おれはいつもと変わらずに季咲のもとに訪れた。呼び鈴を押しても返事はない。勝手に家に上がるといつもの心地よい香りではなく、生臭い香りが漂っていた。玄関には知らない靴が、無造作に散らばっていた。ぼくは恐る恐るリビングに迎う。リビングに近づく毎に臭いは強くなり、吐き気を覚えた。それでもおれは歩みを止めなかった。嫌な予感がしたからだ。


その予感は嫌な意味で実現した。

リビングは玄関とは比べ物にならないほどに生臭く、軽くめまいを起こす。

その生臭さの正体は『血』だった。分かってはいたけれど、それはもしもの話であって、信じたくない結末だった。昨日までは楽しく囲んだ食卓に、季咲の両親が倒れている。全身が血だらけで、生きているとは思えなかった。


すると今度は二階で悲鳴が聞こえる。季咲の声だった。

おれは最悪の想像をしながらゆっくりとリビングを出る。その際にこっそり、包丁を抜き出した。ゆっくりと階段を上ると、季咲の部屋から声がした。知らない男の声だった。扉は開いたままで、ゆっくりと扉に近づく。


男二人は刃物を片手に、季咲の怯える反応を楽しんでいた。

全てが一瞬だった。

視界に映るのは怯えた顔をする季咲。

嗅覚を刺激するのは生臭い香り。

鼓膜を通じて聞こえてくるのは男の悲鳴。


その時、ぼくが何をしたか分からなかった。

季咲が殺されると感じて体が熱くなり、今に至っている。

それで理解した。


『おれは人を刺したんだ』と。絶対にしてはいけないと、理解していたはずなのに、無意識に人を刺した。しばらく周りが見えなかった。

絶対的な罪の意識に飲み込まれたからだ。

もう一人いた別の男の声にならない悲鳴で意識が戻る。


そこにいた男は顔をひきつらせ、腰が抜けているようだった。

ぼくが一歩歩みを近づけると、それに合わせて男も一歩下がる。

そのときのおれに理性はなかった。

当たり前の毎日を壊されたショックで理性が消し飛んだからだ。


「ねえおじさん?なんで逃げちゃうの?おれの居場所を返してよ。」


「いやだ…死にたくない…助けてくれ…お願いだ!」


そのときのおれの顔は狂気に陥っていた。季咲の部屋にある鏡が血に染まったおれの顔を無慈悲に移す。

その顔を季咲には見せられなかった。見せてしまったら二度と、顔を合わせられなくなる気がしたから。


「そうだなあ。おれの居場所を返してくれたら見逃してやるよ」


「そんなの…どうやって…」


「そんくらい自分で考えなよ。大人なんでしょ。おじさんはさ?ほら早くしないとそこの人みたいになるよ?」


「ひいっ!…すまなかった。命だけは救ってくれ!なんだってする!金だって出すから!」


「金じゃあ解決できないんだよ?わかってんの?おじさんのしたことはそれだけ重たいんだよ?」


おれは男のすぐ隣の壁を刺した。男の痙攣は勢いを増し、正気を失っていた。

そして、別の男が持っていた刃物が男の指に当り、指を切った。

その痛さで目が覚めたのか、男は刃物をこちらに向ける。


「はは…ははははは!やられる前に殺してやる。命乞いは受け付けねえぞ!」


男はおれに突進してくる。そのときのおれは時間が止まって見えた。男の向けた刃物をかわし、腹に蹴りを入れる。その衝撃で落とした刃物を拾い、季咲に告げる。


「なあ季咲。この男、お前が殺すか?それとも俺が殺すか?」


「そんな…殺すなんて嫌だよぅ…私はみんなで仲良くしたいの…だから誠も、もうやめてよ。私、誠を嫌いになりたくないよ…」


失っていた理性を取り戻すには充分過ぎる言葉だった。

おれは今までしたことを思いだし、刃物を床に落とす。

それを見計らったのか、男が立ち上がり襲いかかる。


「ばかが!このまま二人とも殺してやる!あの世でも幸せになぁ!」


再び時間が止まったように遅く見える。今度は顔に飛び蹴りをいれ、迎いの壁まで吹き飛ばす。

それで意識が飛んだのか。男はうずきながら寝ていた。


しばらく時間が経ち警察が訪れ、男の身が拘束される。おれは警察で事情聴取を受け、数日後に表彰された。


対する季咲は、槍の稽古を始めた。何でも「私の信念を貫き通すためよ」らしい。

季咲らしいなと感じてぼくもそれに見習い剣術と武道の稽古を受け始めた。

互いに目標を掲げながら。


季咲は『自らの信念を貫き通す強い心を持つ』

おれは『全てのものを受け止め、肯定できる強い心を持つ』

互いの目標を定め、その目標を追い続けた。


互いに始めたそれぞれの武術は世界のレベルにまで達し、確実に目標へと近づいていった。

そして時は遡り現在、試験の時がやって来た。魔法の使い方もある程度はマスターすることができる様にまでは成長し、互いに目標を具現化させた、

絶対に貫けないものがない、『信念の槍』

何ものも通さない絶対無敵の盾、『消失板』改め、『肯定の盾』

存在がおれの目標と正反対の『反射板』改め、『否定の盾』


それらの存在がどれほどまでに凶悪であり、これからの生活が修羅場と化すか、そのときのおれたちは考えずに試験の場に足を踏み入れる。

どうも連載が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。

次に書く短編小説の下書きとネタ作りで忙しくなってしまい遅れた次第であります。

ちなみにテーマは『あるかもしれない人生最悪の一寸法師』のお話です。

詳細はまた後日お伝えします。それでは

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