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マシンナード ~機械オタクと魔女5人~  作者: 於田縫紀
第5章 新しい日常

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第85話 だから俺も続けていける

「私もお前に質問をする。

お前はあの義足を何を思って作った。

実際に使った感想を綴った手紙を見てどう思った。

実際にジェシーに感想を聞いてどう思った。」


 俺は思い出す。


 あの義足は、俺にとってはただの課題だった。

 そのために香緒里ちゃんに新素材を開発してもらったり、ばね騒動を使って提出日を稼いでその分細かいプログラムの動作や構造の微調整、それこそ足の指一つ一つの動作さえバランスと意志との兼ね合いで色々拘ってはいるけれど。


 だからあの手紙を貰って凄く嬉しかった。

 苦手な英語、それも手書きの長文を一晩で翻訳してしまうくらいに。


 そしてさっきのジェニーの告白。

 最後はまあ逃げてきた訳だけど、それでも俺自身凄く嬉しかったのは事実だ。


「凄く、嬉しかったです。そこまでの思いも苦労もしていませんでしたけど。」

「でもその嬉しさを忘れなければお前は物作りを続けていられる。違うか。」

「はい。」

「ならその経験を大切にしておけ。」


 先生はそう言ってぷいとそっぽを向く。


「まあそんな経験はめったにないだろうから、当分はまた教授会を笑わせるようなものでも頑張って作ってくれや、また。」

「はい。」


 やばい、

 すげえマジで涙が出そうだ。

 なので気分を変えるため、ちょっと先生に質問してみることにする。


「ところで写真に写っている他の女性は誰ですか。」

「ん、あ、まあその時よくつるんでいた仲間だ。」


 あ、かなり怪しい。


「今の奥様も写っています。」

「一番左、アナの隣だ。」


 一番田奈先生から離れたところに写っている、美人というより可愛い感じの女性のようだ。


「これ以上の質問は拒否するぞ。お前もほとぼりが覚めたら出て行け。鍵は知っていると思うがオートロックだから心配いらん。」


 しっしっ、と先生は俺を追い払う手真似をして、ウィンドゥを戻しCADの画面にする。

 ここまでのようだ。


 俺は指定された部屋、隣ならジェシーの部屋にあたる部屋に入る。

 ベッドと机があるが、ベッドにはシーツも布団もない。


 まあでもマットがあれば十分だ。

 俺はマットに寝転び目を閉じる。

 思ったより疲れていたらしく、あっさりと俺は眠りの世界に入った。


 

 次の日6時頃俺は田奈家を辞して薊野家に帰る。

 田奈先生は寝ているようなので挨拶はしなかった。


 玄関は掌紋認証であっさり開いた。

 皆寝ているらしく静かだ。

 こっそり自分の部屋のドアを開ける。

 ジェシーは寝ているようだ。


 でも俺がベッドに近づいたところで。


「ごめんなさい、オサム。昨日は少しやりすきますた。」


 ジェニーが目を閉じたまま俺に話しかけてきた。


「いやまあそれはそれとして。アナさん、ジェシーの先生の若い頃の写真を見てきたよ。」


 俺は話題を変えるため、そうジェニーに告げる。


「え、本当れすか。」


 ジェシーが飛び起きる。


「何処のあったれすか。どんな写真れすか。」

「隣の田奈先生のところで見せてもらった。美人だね。」

「そうなんす今でも綺麗なんす。私も見たいれす。」

「まだ田奈先生寝てるしな。後で起きたら見せてもらおう。」


「そうね、私も見たいわ。」


 不意に第三者の声がする。

 振り返ると、今の声の主の由香里姉を始め香緒里ちゃん、鈴懸台先輩、月見野先輩と全員揃っている。


「部屋を抜けたと思いましたらそんな所にいらしたなんてね。でも面白そうな情報ですわ。」

「先生と田奈先生は色々ロマンスもあったらしいれす。後で皆で聞いてみるれす。」


 おいよせ、と思ったがもう遅い。

 結局朝9時、ジェシーが田奈先生の起床を確認して20分後に全員で田奈先生の家に強襲する羽目になってしまった。


 ごめん、我が教官。

これでこの章は終わりです。

読んでいただいてありがとうございました。

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