第80話 翔べる脚(1)
ふと誰かの気配がして目が覚めた。
少し目を開けると、ジェニーが布団に入ろうとしている。
「ごめんささい。起こしましたれすか。」
「大丈夫、どうせ明日は休みだしさ。」
それにここは俺の部屋。
風呂も片付ける必要ないし。
「なら起きたついでにお願いあるれす。」
「何だ。」
「あの2人と同じように、寝る時一緒に手を繋いで欲しいです。」
それくらいなら良いか。
俺は右手をジェニーに預ける。
「ありがとうれす。」
ジェニーはそう言って俺の手を握った。
「カオリにもユカリ先輩にも色々話聞いたれすよ。オサムのこと。」
「どんな話だ。」
「色々れすよ。出会った時の話とか公園で遊んだ話とか。どれくらいあの2人がオサムのこと思っているのかよくわかったれす。」
恥ずかしい話をしたんじゃないよな。
そんな事を思いながら俺はジェニーの話を聞いている。
「でも、ワタシも同じ位オサムに感謝しているれすよ。」
「何で。」
「この脚れす。」
ジェニーは握った俺の手を太腿のところへと導く。
触れたのはジェニー本来の脚と俺が作った義足のちょうど境目。
「この脚のお陰でワタシはあの時のワタシを抜け出せたれす。」
そう言ってジェニーは、語り始める。
「この義足を手にした頃のワタシは多分最低の状態れした。
半年前の交通事故でパパもママも死んじゃって、ワタシも両足が無くなって。
入院期間が長かったので来年は進級出来ないことも決まりますたし、好きだったバスケも出来なくなりあした。
車椅子で時々未練がましくプレイ中のバスケコート見たり、もうすぐ同級生じゃなくなるクラスメイトの慰めをただ聞いたりしていますた。
自分は不幸なんだとただ思い込んでいますた。
そんな時、担当の先生から義足の話があって、お金も普通の義足より安いし何となくお願いしますた。
後で聞いたのですが先生は昔日本に留学していてこの学校の先生と個人的に繋がりがあったようれす。
正直な処、義足に何も期待していませんれした。
らからこの義足を選んでくれたのも実は先生れす。
『これが一番生活で使いやすいという事もあるけれど、それ以上にジェニーを変えてくれる可能性があるから。』
そう言った先生の言葉の意味は、その時はワタシにはわかりませんれした。
ただ車椅子を使わなくて済むから便利になるかなと、それしか思いませんれした。」
少しずつこの章の核心部に入ります。
ちなみに核心部とはジェシーの昔話とかエッチではないです。
(書いている本人的には)




