第78話 巨大なベッドは誰のため
戻ると既に荷物移動が始まっていた。
「修兄、ちょうど良かったです。これ運ぶの手伝って欲しいです。」
香緒里ちゃんとジェニーが運ぼうとしているのは巨大なベッドマット。
「でかいなこれ。どこへ運ぶの。」
「東南の角部屋ですがあそこのベッドも出すのでとりあえずリビングの端までです。」
俺も手伝ってフローリングをずるずるひきずって運ぶ。
「しかし大きいなこのマット。」
「ダブルより大きいクイーンサイズです。1枚マットの市販品では多分最大サイズです。」
何か縦にも横にも寝れそうだ。
ベッドの台も分解して運び、東南の部屋のシングルベッドを代わりに西側奥の部屋に運び込んで、それぞれベッドを組み立てる。
「これでベッドの移動は終わりです。他は最初そのままで使って大丈夫かなと思います。」
香緒里ちゃんがそう宣言する。
「ところで誰がどの部屋を使うかは決定してるの。」
俺は香緒里ちゃんに尋ねる。
「西の一番奥がお姉の部屋で、隣が私の部屋です。」
向こう側は元々家主の部屋っぽかったしウォークインクローゼット等もあるから順当だろう。
「東側の3部屋のうち北側の部屋がジェニーの部屋です。」
「暑いの苦手なのれ一番風が通る涼しそうな部屋をもらったれすよ。」
成程。
「真ん中は来客用です。シングルベッドの他に折りたたみのサービスベッドも使えるようになっているです。」
「つまり金曜日の私達の部屋だね。」
鈴懸台先輩がそう宣言する。
「南東の角が修兄の部屋になります。」
角部屋だし南向きだしいい部屋だな、と俺は思う。
でもそこで出る疑問点。
「どうせなら俺の部屋より来客用の部屋にあの大きなベッドの方が良くないか。」
と、そこで香緒里ちゃんの顔がぽっと赤くなった。
「修兄の部屋はあれでいいんです。」
「あのベッドなら私と香緒里が一緒に寝ても、更にジェニーが一緒に寝ても大丈夫だろ。」
由香里姉がそう解説。
おい待てそれまさか。
「夜這いは日本古来の文化だしな。」
鈴懸台先輩!そんな文化出さないで下さい。
「親も公認していらっしゃるみたいですし、良かったですわね。」
よし後で部屋に厳重な鍵をつけよう、絶対だ。
「無駄な鍵とかはつけないでね。必要なら私は魔法の行使を辞さないですし、香緒里も物に言うこときかせる魔法は得意ですから。」
俺に安住の地はなさそうだ。
唯一不可侵な寮すら追い出されるし。
カタツムリや貝類はいいな、不可侵な自分の部屋がかならずあって。
人間はそうもいかないんだよな……
ちなみにその後、あのベッドに何人寝れるかを実際に試させられた。
4人でも寝れるがちょっときつい。
3人なら余裕という結論だった。
……俺は1人で充分だ。




