第44話 小話4終話 これが最強護身具だ
あの後結局3時間近く経って由香里姉と鈴懸台先輩が起きてきたので、俺達は無人島を後にして学校へと帰った。
車に戻った時には既に香緒里ちゃんはメモを書き終えていたようで、ちゃんと服も着ていたし水着も片付いていた。
俺はその日は工房にこもらず、素直に寮の自室へと帰った。
もちろん後処理をするためである。
幼馴染で妹分とは言えあそこまで育っていたらしょうがないじゃないか!
翌日、凄くにこやかな表情の香緒里ちゃんが由香里姉を連れて工房の俺を呼びに来た。
ついに思った通りの護身具が完成したらしい。
昨日俺が帰った後完成させたのだろうか。
だとしたら随分と早い出来だ。
昨日朝の時点では概念設計すら出来ていなかった筈だから。
学生会室へ行く途中、ふと俺は香緒里ちゃんのバックの紐部分に小さなファン付きの機械が付いているのを見つけた。
おそとでノー●ットとかどこ●もベープのような感じだ。
「香緒里ちゃん何それ、屋外用蚊取り装置?」
香緒里ちゃんは笑う。
「そんなものです。害虫処理用ですよ。」
そんな事を話しながら学生会室へ入る。
いつもの会議と同様に席に座る。
「じゃあ今日は、ついに香緒里の護身具が出来た件からだ。でも香緒里、今日はまだ演習場を借りていないけれどいいのか。」
香緒里ちゃんは頷く。
「ええ、あの路線で攻撃力を上げるのは止めたのです。威力が大きいと扱いにくくなりますし、筐体も大きく重くなるですから。まあ今までの護身武器も持ち歩いてはいるのですけれど。こんな感じで。」
ワンアクションでマジカルステッキを取り出して伸ばす。
その動作がかなり早くなっている。
「あとはこれですね。」
拳銃を取り出す速さも早い。
というかこの時点で既に護身は充分なのでは、と俺は思うのだが。
「でもこういった武器だと両手を塞がれたりした場合役に立たないです。だから両手を塞がれた場合でも、私の魔力を通すだけで発動する護身具を作ったのです。」
香緒里ちゃんのその言葉とともに、ふと部屋の照明が白くなった気がした。
いや違う。
この感覚は。
思考力が、意識が少しずつ薄れていく……
「散布した加工済の魔力を使って、血液中に何か物質を作る魔法なのですね。確かにこれなら両手が意識さえあれば起動できますわ。」
かろうじて声だけはなんとか聞き取れる。
「流石月見野先輩ですね。この魔法でも影響なしなんですね。」
「強制睡眠や麻痺の魔法を開発していると、どうしても薬物耐性が異常に強くなってしまいますのよ。バックに付けたその機械が散布機なのですね。そして血液中に作る物質は……この感じはプロポフォールでしょうか。わりと良心的な麻酔薬をお使いですね。」
「そこまで分かるですか。流石です……」
香緒里ちゃんと月見野先輩が話しているが俺にはこれ以上聞きとれない。
既に俺の意識も消える寸前。
確かにこれは最強かも……
夏の小話編、無事に終了です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の舞台は秋、2学期開始からスタートします。




