第37話 小話4の3 一応完成カスタム品
夏休みに入った。
でも俺達は外出も外泊の予定もない。
親には課題制作で忙しいと連絡しているが、本当は香緒里ちゃんの件の収拾がまだついていないためである。
なので学生会幹部一同、香緒里ちゃんと一緒に自主的に学校に居残っている訳だ。
そう言えば最近、香緒里ちゃんのバックが変わった。
前はA4がギリギリ入る小さいディパックとポシェットだったのだが、最近は持ち手が長いトートバックを肩から下げている。
工房での休憩中、特に深く考えずに聞いてみた。
「そう言えばバック変えたの。」
「気づきましたか。取り出し易いのを探して注文したんですよ。」
そう言って香緒里ちゃんはバックを肩に掛ける。
「これをかけているとですね、こんな感じに。」
右手が素早く動き、白い棒が出てくる。
出した時の勢いで棒は伸び、70センチ位の長さになった。
「じゃーん、新兵器です。」
よく見ると色々変わってはいるが俺が渡したスタンガンだ。
色が白色になっていて所々に色の付いた石が貼り付けられてデコレーションされていて、先端部には銀の宝飾のついた赤い宝石っぽい星がついているけれど。
「香緒里ちゃん専用マジカルステッキです。」
可愛らしい外観とは裏腹に、バチバチという放電音と青い火花が散っているのが見える。
先端部の星も帯電しているようだし、そもそも俺が渡したときより放電音が大きい。
「これって危ない改造していないよな。」
「あくまで自衛用なので襲ってきた奴が悪いのです。ついでに言うとレギュレーターと変圧器変えただけです。」
おいそれは不味いだろ。
触ったら麻痺どころかショック死ものだ。
「まあこれは威嚇用ですから、本命はこちらです。」
自称マジカルステッキをたたんで仕舞い、今度は拳銃を取り出す。
これも俺が自衛用に渡したエアガンの筈だ。
でも外観は変わっている。
例えばごついドットサイトが付いている。
グリップ下。怪しげなチューブが伸びでバック内へと繋がっている。
何かいやな予感がする。
「これは?」
嫌な予感がするが一応聞いてみる。
「うんっと、まずモーターを同じ位の大きさの魔力モーターに変えました。的を見やすくするために市販の軍用のサイトを買って付けてみました。更に威力アップ目指して中のパイプに加速用魔法を重ねがけしました。」
何かヤバイ予感がする。
弾が小さいのだけが唯一の救いか。
「あとそのパイプは何だ。」
「自動給弾装置です。バックの中にベアリング球が2キロ位入った箱があって、ここから給弾しています。これなら結構長いこと連射できる筈です。歯車なんかは加熱しないよう魔法かけでいますし。まだ試射していないから威力はわかりませんですが。」
俺の魔法で確認する。
機能上は何も問題はない。
香緒里ちゃんの説明の通り動作するようだ。
なら余計にこの場で試射はまずい。
「試射は攻撃魔法科の演習場でも使ってくれ。この中だと備品が壊れる。」
「そうですね、あとで由香里姉に聞いてみます。」
不安たっぷりだが、取り敢えずこの場でのこの話は終わった。




