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マシンナード ~機械オタクと魔女5人~  作者: 於田縫紀
第3章 迷い考えて作るんだ!~魔法工学生の夏~

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第36話 小話4の2 軽く改造実用品

「香緒里ちゃん、この管の中を通る物体の運動エネルギーを10倍程度にする魔法ってかけられる。」


 香緒里ちゃんもバネ相手は飽きていたのだろう。

 俺の作業場方向へと歩いてきた。


「うーん、加速させる魔法でいいですか。」

「それでお願い。ありがとう。」


 後は充電池を取り出して魔力電気変換器とレギュレーターを取付け。

 魔力導線をレギュレーターから出してグリップに埋め込む。

 そして銃を組み立てる。


「あとはこの銃と内部に質量が4分の1になるように魔法をかけてくれるか。」

「もっと軽くも出来ますけれどいいですか。」

「それくらいが扱いやすいし計算上ちょうどいい。」

「うーん、これで4分の1です。」

「ありがとう。」


 それで組み立てれば完成。

 ちなみに細かい所のグリスアップ等もちゃんとしてある。

 見かけは市販品のままだが、威力はそれなりになっている筈だ。

 最後にBB球の代わりにベアリング球を入れれば完成だ。


 まず1発撃ってみる。

 ベアリング球はきれいに飛んでいき、狙った工房隅のウエス入れの箱に穴を開ける。

 うん、予定通りの出来だ。

 

 セレクターを連射にして中の弾全部を打ち出す。

 さすがにちょっと反動はあるが、機構に異常はなさそうだ。

 ベアリング球を補充しておく。


「これで護身用の武器は完成。」


 どれどれと香緒里ちゃんは覗き込む。


「何か可愛くないですね。それに外見も格好良くないです。」

「外見は市販品のままだからな。何なら自分で加工しろ。」


 こいつも見かけは別として魔法工学科なのだ。

 加工等の腕も決して悪くはない。


「この棒は何ですか。」

「特殊警棒型スタンガン。この棒を引いて延ばして手に握って魔力を通してみて。」


 香緒里の握った棒の先端付近でバチバチと音がして小さな火花が散る。


「おおーっ、高電圧による放電現象ですね。」

「まあその通りだが。」

「でももう少し放電が派手な方が好みです。」

「あんまり電流流すと相手が死んじゃうだろ。今でも相手を無力化するのに十分な能力があるぞ。」

「まあその辺は後で自分で改良するです。で、次は銃ですね。うーん銃はロマンなのです。」


 どんなロマンなんだろうか。

 俺は知らない。


「これも魔力駆動だからな。握って魔力を通して引き金を引けば弾が出る。」


 香緒里ちゃんは先程俺が狙ったウエス袋を狙う。

 発射されたベアリング級はわずかに逸れて床に当たって跳ね返り、近くの木材に穴を開けた。


「うーん、もうちょっと威力が欲しいです。」

「それでも護身用としては十分だろう。連射も効くし撃ちどころ悪ければ再起不能になるし。」

「本当ですか?」


 香緒里ちゃんは立ち上がってストック場所の方に行き、板材を引きずって出す。

 厚めのベニア板だ。確か厚さは12ミリ。

 結構重くて頑丈だ。

 そしてその板から5メートルの所で、今度はセレクターを変えて連射で撃つ。」


「うーん、ちょっと反動がありますね。」


 そう言って板を確かめる。


「やっぱり威力不足です。弾が貫通していないです。」


 俺は状況を確認する。

 鋼の球体が何個も板に埋まっていた。


「この板にめり込む位の威力があれば十分だろ。これ以上だと実銃になっちゃうぞ。」

「そこは見解の相違なのです。でもまあこれはこれで面白いのでいただきます。ありがとう、修兄。」


 この時俺は気づいていなかった。

 香緒里ちゃんはあの由香里姉の妹。

 そして魔法工学科生。

 機械いじりの能力も才能もあるが常識が斜め上である事を失念していた。

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